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今回の一押しは「バーニー・ウィリアムス」だあ!

2005年09月20日

 アメリカ南部を襲ったハリケーン「カトリーナ」。その優しげな女性の名前からは想像もつかないような破壊力で、大国は一瞬にして悲惨な状況になってしまったようです。ジャズで有名なニューオーリーンズは街ごと水没し、死者や行方不明者の数は数百人単位とのこと。略奪が横行して都市は無法地帯と化し、水も食料もなく救助を待ちわびる被災者達が泣き叫んでいる。本当にお気の毒なことです。世界のリーダー、強力な軍隊を誇るアメリカも、自然の前には無力だったということですね。「天災は忘れた頃にやってくる」と言いますが、最近は想像もしないような大災害が世界各地で起こっているようで心配です。

 ところで。
 実は最近、この私にも困ったことが起きてしまいました。今回はその「悩み」についてお話ししてみたいと思います。恥ずかしいので、ほんの少しだけですけど。
 
 私、B型のせいか、趣味は殆どありません。せいぜいジャズやクラシックなどの音楽を聴き、ギターを弾いて読書して、アスリートゴルファーを目指しつつ安い版画を集め、ときどきスポーツカーをかっ飛ばしてワインを飲む程度です。アンケートの「趣味」の欄になんて書くか、いつも困ってしまうほどです。そしてそんな中でも、ギターとゴルフはどちらを取るとも捨てるともつかず、今日に至っております。だってどちらも本当に面白いんですもの。
 まあ、聞こえのいい言い方をすれば「文武両道」ということになるわけですね。しかしこれに対しては「一芸に秀でる」という対抗馬がありまして、どうも世間ではこの対抗馬のほうが幅を利かせているようです。藍ちゃん(宮里)にしても愛ちゃん(福原)にしても、一つのことを徹底してやってきたからこそ、世界に届くビッグネームになったのでしょう。

 でもね、私は別にその世界でプロになるわけではないので、まあトーシロが楽しむ程度でいいのでございます。そしてゴルフに関しては、4年ほど前に某ゴルフスクールで素晴らしい先生に出会い、生涯ベストスコア83点を叩き出すまで頑張りました。クー、偉い!さすが!これ以上うまくなったらもしかすると仕事を変えなきゃならなくなっちゃうかもしれない(笑)。そんな危機感から、ここ2,3年はゴルフの練習から遠ざかり、ギターの世界に没頭して参りました。ギターもちゃんと習ってみると実に奥が深く、もう、やってもやってもというより、やればやるほど魅了されてしまいます。 
 白魚のような細い指が、自在に指盤の上を走り回る。ダイアトニックの音階からは想像もつかない複雑でアウトでスリリングなフレーズが耳を突き刺す。そんなことばかり考えていると、残念ながらゴルフの練習なんてしている暇はありません。まあ、最低でも月に1回くらいはゴルフ場に行く仲間がいるし、練習しなくてもそれなりに面白い勝負ができるので、ここ数年の私は余暇のほとんどをギターの練習に充て、打ちっ放しなんて2年以上も行かずに過ごしておりました。

 ところが。
 その間に「病」は深く静かに進行していたのです…。

 どんな病気にも予兆というものはあるもので、大病をやんだ人からは「そういえばここのところ階段を登ると息苦しくて」とか「いや実は数ヶ月前から血便が」などという話をお聞きするものですが、私の場合も、記憶ははっきりしませんがいつからかスコアが徐々に下がりはじめ、そう言えば昨年あたりは100を切れない「予兆」が度々起きていたのでした。
 そして今年。「病」は突然爆発しました。それは世にも恐ろしいシャンクという病気です。ゴルフをなさらない方のためにちょっと解説しますと、シャンクは英語でshankと書きまして、牛や羊などのすね肉のことをいいます。そこから転じて軸とか棒をイメージする言葉となり、ゴルフでは、本来ボールが当たるべきクラブのフェイスの部分ではなく軸(シャフト)の部分にボールが当たってしまう現象を指すようになりました。

 テレビでタイガーウッズや藍ちゃんを見ていると、クラブを振れば誰でもパーやバーディが取れるような気がするでしょ?でも実際はそんな簡単なものではありません。遊びのくせにゴルファーはみんな悩んでいるのです。
 ましてそれを職業にしているプロの方々は毎日大変な精神的重圧と戦っているわけで、この一打がカップに入れば借金が返せると思った瞬間に金縛りにあって体が硬直し、ほんの数十センチのパターが振れなくなってしまうのだそうです。こういう病気を「イップス」といいまして、実に涙ぐましい心の病気なのですね。

 シャンクもやはり心の病気です。素振りはスムーズにできるのに、ボールを打とうと思った瞬間に「この前失敗したなあ」「チョロった球は打ちたくないし」「当たらなかったらどうしよう」などの恐怖のイメージが渦巻き、ほんの一瞬体がボールに近づく。自信のないことはなるべく体の近くでやりたくなるのが人間の本能のようで、その不安な心理がクラブを数センチだけボールに近づけてしまうのですね。そしてあらぬところに当たった球はとんでもない方向に飛んでいってしまうのです。
 ショックです。マジで落ち込みます。「シャンクでショック」なんて茶化しても、ニコリともできません。よーしここで一発、と張り切った瞬間にすべてがおじゃんになる。そしてその失敗のイメージがミルフィーユかバウムクーヘンのように心に層をなして、ますます泥沼にはまっていくのです。
 私、結構まじめに悩みました。もう以前のような好いスコアは全然出ないしゴルフなんかやめようかなあ、とか。ギターとゴルフを両立させようなんて考えがそもそも間違っているのかなあ、とか。ゴルフから帰ってくると指の関節が固くなってギターに悪いしなんて、自分で自分に言い訳までしてしまう始末。

 ところが、です。
 心に暗雲が立ちこめていたそんなある日、タワーレコードのジャズのコーナーに行ってCDを眺めていたら、不思議なキャッチコピーが目に映りました。そこには確か「ヤンキースの松井も絶賛!」というような言葉が書いてあったと思います。
 亀屋万年堂のナボナなら分かるけど、ジャズのCDを松井選手が推薦してどーすんの?と思いません?その違和感に私の心は瞬間的に反応したのでしょうか。何となく気になったそのジャケットを手にとって見ていたら、だんだん大変なことが分かってきました。なんとそのアルバムは、現役大リーガーでニューヨーク・ヤンキースの4番センター、バーニー・ウィリアムス(Bernnie Williams )という人の作品だったのですぅぅぅぅ。ジャカジャンジャンジャーン!!

 分かりますか、これがどういうことか?ねえ、ちょっと!
 あ、そんなに興奮しても仕方ないですけど、なんと、プロ野球選手でしかもプロのジャズギタリストをやっている人がこの世の中に存在していたのです!たまげますなあ。ほんとに……。
 家に帰ってからネットで調べてみたら、バーニーさんは1968年9月13日プエルトリコ生まれで、今年37歳。イチロー選手も彼にあこがれ、同じ背番号の51をつけている。野球では、スイッチヒッターでホームランバッターで抜群の成績を残している。そして同時にプロ野球のシーズン中にライブまでやってる。ロッカールームはジャズクラブと化す、なんてキャッチコピーまである。天が二物を与えた見本みたいな人なんですね。

 いやー、恐れ入りました。それに引き換え、この私めは一体何なんでしょ。ちょっと上手くいかないくらいでゴルフはギターに悪いだと?ふざけんな、このバカ!って感じです。ゴルフさま、本当にごめんなさい。許してください。深く、深く、反省しております。
 それ以来、私は考えを改め、ギターとゴルフを両立させる人生を模索しております。初心に帰ってゴルフの練習場にも通い、真面目に練習する。ライバルの新井さんに「シャンクリラ」なんて馬鹿にされないように、一生懸命やる。そしてギターの練習も今まで以上に真剣に取り組む。何事も、真面目に、ちゃんとやって美しくならなければいけない。よーし、頑張るぞー。というわけで今月の一押しは、私の後頭部をガツンと殴ってくれた「バーニー・ウィリアムス様」でした。

 いやー努力の甲斐あって効果が現れ、ここのところまた80台のスコアが出るようになりました。うれしいなぁ、なんて喜んでいたら、音楽の世界にも「イップス」があるんだって?おいおい、まじかよ。ギターを持った瞬間に固まって何もできなくなったらどうしよう。うーん、悩みは尽きないわ…

 

 

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