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今回の一押しは「皇居一周」だあ!

2006年01月21日

 みなさま、明けましておめでとうございます。昨年中はこの一押しコーナーをご愛読下さり、誠にありがとうございました。どうか本年も引き続きよろしくお願い申し上げます。

 一年の計は元旦にありと申しますが、みなさんはこのお正月に何か目標を立てましたか。
 え?飲み食いに忙しくてそんな暇なかった?12月の一押しで「すっきりスリムで階段ピョンピョン!」を合い言葉にしようって約束したじゃん。まさか肥ったなんていうんじゃないでしょーね。私は公約通り、ウォーキングに精を出しておりましたよ。今年は幸か不幸か、正月休みを潰すような仕事がなかったので、清く正しく美しいニッポンの正月を過ごさせていただきました。
 まずは健康志向のイメージを高めるため、正月恒例、箱根駅伝のテレビ観戦から。正しくは「第81回東京箱根間往復大学駅伝競走」です。最終的には亜細亜大学が総合優勝しましたが、今年は順天堂大学が素晴らしいドラマを見せてくれました。往路ではラスト第5区を力走した今井正人選手。15位でたすきを受け取ってからぐんぐんとスピードを上げ、箱根の坂道なんのその、約21qの長丁場を区間新記録の1時間9分で走りきり、総合順位を4位にまで押し上げました。凄いですね〜。
 人間という生き物は、実に多様な可能性を秘めているのですね。自らを鍛えさえすれば、世界中の人々が恩恵に浴せる大発明をしたり、誰もが感動する文学作品を書いたり、ときには機関車のように坂道を駆け上がったりすることができる。私は1月2日の往路放送があった夜は、今井選手の顔を頭に浮かべながらギターの練習に打ち込みました。ウソです。

 しかし同時に人間はやはり生き物、機械とは違いますから、そのときの体調次第で予想もしないハプニングが起きることもある。翌日の復路では、第8区を受け持ったキャプテンの難波祐樹君が可哀相なことに脱水症状を起こして意識朦朧となり、一時は真っ直ぐ走ることもままならず、一般車が走っている反対車線に飛び出しそうになったりして本当にハラハラしました。
 難波君自身はきっと自らの成績を悔やんでいることと思いますが、しかし多くの観衆は彼のもがき苦しむ姿を見て、このレースの過酷さと団体競技における一人一人の選手の責任の重大さを再認識し、それ故に駅伝というドラマからより多くの感動を得たのではないでしょうか。

 多くの人が暖かい部屋でお屠蘇やおせち料理を楽しんでいるときに、なんでそんな苦しいことをするの?なーんていう素朴な疑問が頭をもたげないでもありませんが、そういう怠惰で、無気力で、退廃的な、実にけしからん愚問はこの正月という機会に徹底的に退治しなければなりません。
 「世の中に 寝るほど楽は なかりけり 浮き世の馬鹿は 起きて働く」などという狂歌がありますが、とんでもありません、人間は鍛えた数だけ成長するのです。同じ正月を酒を飲んで寝て過ごすのと、毎日マラソンをして足腰を鍛えるのとでは後々どれほどの違いが生じるか、貴様、考えたことあるのか!と自分を叱咤激励しなければなりませんが、………ま、ちょっとは酒も飲みたいし、楽もしたいですよね。

 というわけで箱根駅伝に興奮した私は、この思いを何かの形にしたいと思い、そうは言ってもいきなり走り出したらきっと10分で潰れるだろうし、ハアハア苦しいのはいやだし、後で足が痛くなったら困るし、と詳細かつ緻密に検討した結果、ふと思いついた皇居一周のウォーキングに出かけてみることにしました。
 
 私、東京の街に半世紀近くも生きてきて、情けないことに皇居という場所に自分から進んで行ったことがありません。外国の方を皇居前広場にご案内したとか、科学技術館にロケットを見に行ったとか、そういう断片的な経験は何度かあるのですが、皇居を一周して東京の地理を再確認しようと思い立ったのは今回が初めてです。正月らしい我ながらいいアイデア、何だか興奮してきました。

 みなさんは爆風スランプというバンドの「大きな玉ねぎの下で」という曲をご存じでしょうか。ネットで調べたら1989年の作品ということで、なんと17年も前のヒット曲なのでご存じない若い方もいらっしゃるかもしれませんが、楽譜を見ると要所にディミニッシュ系のコードが登場してなかなかしゃれてますし、メロディが大変美しい。
 そしてそれに加えて、歌詞がキュンとくるんです。ペンフレンドの女の子を日本武道館のコンサートに誘ったけれど結局現れなかったという、不実な女を糾弾する、じゃなくて片思いの青年の失恋ストーリーなのですが、かつてロックコンサートのために日本武道館に何度となく通った青春時代の思い出がオーバーラップして、私には忘れられない一曲となっています。
 その歌詞の一節が、「九段下の 駅を降りて 坂道をー」とか「千鳥ケ渕 月の水面 振り向けば 澄んだ空に 光る玉ねぎー」などとなっていて、要するに皇居周辺の風景そのものなんですね。そこで今回のウォーキングは、爆風スランプの曲を頭の中で流しつつ、JR飯田橋駅からスタートして靖国神社の前を通り、千鳥ケ渕から皇居エリアに入ってみました。

 まずは靖国神社前から見た日本武道館の様子。こんな感じです。澄んだ空ではありませんでしたが、武道館の屋根の上には「大きな玉ねぎ」と歌われた「擬宝珠(ぎぼし)」が燦然と輝いています。いよいよ始まる私の皇居一周の旅は、日本武道館のある北の丸公園には入らずに、その入り口を起点として、反時計回りに一周するコースを取ることにします。
  
  日本武道館                千鳥ケ渕

 最初に現れたのは千鳥ケ渕です。美しい桜並木のむこうにお堀が豊かに水を湛えているのが印象的です。東京の真ん中に、なんて静かで緑豊かなエリアがあるんでしょう。そしてその脇には「千鳥ケ渕戦没者墓苑」という石碑がひっそりと建っています。小泉首相の靖国神社参拝問題が大きな政治問題となっている昨今、この手の話題はなかなかナイーブですが、この墓苑には東南アジア地域でなくなった方々のうち引き取り手のない人の遺骨が祀られているとのこと。私も足を踏み入れ、日本のために命を捧げた方々のご冥福を祈り、感謝の気持ちを込めて手を合わせてきました。
  
  千鳥ケ渕戦没者墓苑           半蔵門

 続いては半蔵門。半蔵といえば、服部半蔵。別名忍者ハットリくんですね。江戸城の時代に、伊賀忍者の服部半蔵の屋敷がここにあったためにこの名前がついたとか。小さいですが、凛とした美しい門です。
 そしてこの半蔵門を過ぎると、大きく視界が開け、左側には桜田濠、右側には三宅坂が現れます。その名のとおり、道は緩やかな下り坂となり、前方には巨大なビル群が見えてきます。あれが外務省や財務省が入っている霞ヶ関の合同庁舎ね。日本のエリートたちが、きっと夜も寝ずに仕事に励んでいるのでしょう、よく知りませんけど。
 
   三宅坂から桜田濠を望む

 そうか霞ヶ関といえば国会だ。というわけでちょっと寄り道をして国会議事堂を写真に収めます。パチリ。ついでに警視庁もパチリ。しかしこの辺りは警備の警察官が大勢いて、何となく落ち着きません。別に悪いことは何もしていないのに、遠くからジロッと睨まれているような気がして、歩き方までぎこちなくなります。この寒いのにお仕事ご苦労様、と一言ねぎらいの声を掛けたいところですが、近づいていったら怪しまれるだろーなと思い、断念してルートに戻りました。
     
   国会議事堂         警視庁
 
 ウォーキングは快適です。天気はいいし、景色は美しいし。右を見れば交通渋滞、左は静まりかえった松の林。何だかとても不思議な景色です。今頃、愛子ちゃまは雅子ママと松ぼっくりでも拾っているのかなぁなどとしょーもないことを考えながらふと足許を見たら、あらすごい、なんと皇居一周の距離表示が出ています。
 いやー、いろいろと工夫されていますよ、この辺りは。木々には名札がついていて、とにかく大変な種類の樹木が植えられていることが分かりますし、歩道には一定間隔ごとにタイル細工で作った全国の都道府県の花が登場します。こうなると気になって前を見たり、下を見たり、景色を見たり、地図を見たり、もう忙しくて仕方がありません。どうにか大手門近辺で東京都の花「そめいよしの」を発見することができましたが、距離を測ってマラソンしたり、自分の出身県の花を探したりと、皇居周辺は色々な楽しみ方ができそうです。
  
 歩道に埋め込まれた距離表示    東京都の花「そめいよしの」

 そうこうするうちに、次のポイント桜田門が見えてきました。ここもきれいですねー。
 かつて、安政の大獄で過酷な処分を受けた水戸藩の浪士たちが大老・井伊直弼を暗殺した「桜田門外の変」があった場所とは思えません。美しい白壁の門を見上げながら皇居の敷地内に入ると、間もなくかの有名な二重橋が見えてきます。この辺りが皇居見物のメインストリートでしょうね。どちらの方角を見ても本当に美しい。
  
  桜田門のあたり           あまりに有名な二重橋

 後方には広大な皇居外苑の松並木が広がり、砂利道が延々と続きます。これで大体スタートから半分の道のりを過ぎました。ちょっと寄り道をしたりして時間を掛けてしまいましたが、さすがに冬の日の午後、太陽が陰っていくスピードはかなりのものです。夕日に写る自分の影を見たら、あれ?俺ってこんなに足長かったっけ、まあ、昔からスタイルは悪い方じゃなかったけどさ、なんて気分がよくなっちゃうくらい、自分の影がビヨーンと伸びています。
  
   皇居外苑         あまりにスタイルの良い私

 まずい、ちと計画が狂った、何だか急に心細くなってきました。というわけで夕方の冷たい空気に、カメラを持つ指先の感覚がなくなるくらい冷え切ってしまった私は、それから残りの行程を少し早足でひたひたと歩き、ようやく出発地点の靖国神社に戻ってきました。この間、一周約5q、あちこち眺めながら歩くと所要時間は1時間半から2時間程度。オムロン君による走行歩数約1万2千歩。ちょっとしっかりめの散歩コースという感じです。お昼を食べてからゆっくり出かけていっても十分楽しめます。どうぞせめて一生に一度くらいは足を運んでみてください。 というわけでお正月にふさわしい今年最初の一押しは「皇居一周」でした。
 それにしてもよく歩いたらお腹がすいちゃって、ちょうど靖国神社は初詣の人だかりで出店も沢山ありましたよ。「焼きそば」、「たこ焼き」、「おでん」、「わた菓子」、「熱燗」、「しょうちゅう」……。クーたまりません。もうあっちこっちで引っ掛かりそうになってなかなか帰れない!!

 PS 皇居にお出かけになる前には、下記のHPを参照されることをお勧めします。とっても勉強になりますよ。
 江戸城史跡めぐりhttp://homepage3.nifty.com/oohasi/index.html


  

 


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