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今回の一押しは「インターネット中古車査定」だあ!

2006年04月25日

 四月中旬のとある日曜日の夕方、夕焼けが西の空を真っ赤に染める頃に、私は事務所のパソコンに向かってキーボードを叩いていました。といっても「仕事が忙しくてさー」というわけじゃなくて、ちょっとクルマに関する情報が欲しかっただけなんですが。

 その日の午後、私はトヨタの営業マン氏二名に責め立てられておりました。私の事務所の営業車は中年おじさま暴走族用のばかでかい国産車なのですが、これが女性スタッフに不評で不評で、「あんなおっきな車、運転できな〜い」とか「車が大きいから雨の日に自転車で客先に行ったらずぶ濡れになった〜」などという声が日に日に車並みにばかでかくなってきまして、気の弱い私はついに耐えきれず、苦し紛れに「分かった、みんなが乗りやすいヤツに入れ替えよう」などと口走ってしまったのがコトの起こりなのであります。
 私は、このばかでかくてパワフルな暴走車がかなり気に入っていまして、もう6年も乗ったのにまったくもって絶好調、エンジンはますます滑らかに吹き上がり、これを売却して1,300CCのかわいい子と取り替えるなんて夢にも思わなかったのですが、仕方がありません。世は女の時代です。ウーマンパワー全盛期です。男系男子の天皇制だって吹き飛びそうな勢いです。
 
 というわけで買い換える車も決まり、せめてエンジンだけはと1,300CCを1,500CCにグレードアップしていただいて、色もグレードも決まって、最後にこの書類にはんこを押せ、とトヨタ氏に迫られていたのです。
 営業マン氏は、前回同様、値引きも頑張ってくれました。中古とはいえ、もともと大きな車を売って小さい車に買い換える話ですから、差額で支払うお金も大したことはありません。もしかするとお釣りがきちゃうかも。そんな程度ですから、まあ押せと言われればはんこなんかポンポン押してもいいのですが、問題は下取り価格です。
 以前に車を買い換えたとき、ディーラーさんに出してもらった下取り価格に比べて買い取り専門業者が出した値段のほうがウン十万円も高い、という経験をしたことがあったものですから、今回も「値引きはいいとして、その下取り価格、買い取り業者の方が高いんじゃないの?」と営業くんにちょっかいを出してみました。
 彼らは口を揃えて「確かに以前はそういうことがありまして、ディーラーとしてもせっかくの中古車取引のチャンスを相当逃していたのですが、最近では買い取り業者と同じ資料に基づいて査定していますので、そんなことはないと思いますよ。自信を持ってお出しした価格です!」なんてニコニコしながら言うじゃありませんか。

 そっか、それならいいか、ま、6年も乗った車だし、とはんこが契約書類に接触する2センチくらいのところまでいったのですが、それでもと思い「じゃ、おたくに下取りに出す場合と出さない場合の両方のパターンにしておいてくれる?」と言いたい放題を言いまして、その日はお引き取り願いました。

 そうは言ったものの、何だか買い取り業者まで出かけていくのも面倒だし、彼らが自信を持って出した値段ならそれでいいことにしよう、と心では半分決めておりました。そしてパソコンのメールをチェックして、そろそろ帰ろうかな〜と思ったところで、ふと思いつき、インターネットに「中古車査定」という文字を入れて検索ボタンを押したところから、私の人生は大きく変化し始めたのであります。だってそれから1時間以上も色々な人に振り回されることになってしまったのですから。

 「中古車査定」の検索には349,449件のサイトが引っかかりました。うわ、すごい。これを全部見たら一週間くらいかかりそう。というわけで、思いつくままにいくつかのホームページを見ていったら、かつてお世話になった○リバーという会社に出会いました。そしてそこには、車の名前、年式、走行距離など簡単なデータと連絡先の電話番号を入れれば、24時間以内に査定価格を出してくれる、と書いてあるじゃありませんか。
 便利な世の中になったものです。いちいちお店まで行かなくても大体の値段が分かるなんてチョー便利と、ささっとデータを登録し、最後に自分の携帯電話番号を入力して、送信ボタンをクリックしました。
 さーて、これでいいや、帰ろうと思ったら、その隣のサイトにはなんと「同時に3社に査定依頼が出せます」と書いてあります。ほー、こりゃますます便利、情報は多い方がいいに決まっているし、同じデータを送るだけでいいんだから、と○ップル、カー○ブン、○ーカー○ートという3社に同時に査定依頼が送信されるシートにも書き込んで、明日になったらいくらと出るかなあ、にしし、と何だかうれしくなって帰り支度を始めました。そうしたらあなた、予想もしないことが起き始めたのですよ。

 全部の送信が終わって10分もしないうちに、私の携帯電話が鳴りました。発信番号は見たことのない、23区内からです。恐る恐る出てみたら「須田様の携帯でしょうか。この度はお車の査定のご依頼を頂き、誠にありがとうございます」との明るい声。背後には大勢の人が電話に向かってしゃべっているコールセンターそのものの雰囲気が感じられます。
 え、さっきのメールにもう返事が来たの?と驚きながらお話を聞いていたら、具体的な査定価格は査定担当者が私のところまで来てくれて、車を実際に見て出してくれるとのこと。なーんだ、こっちからわざわざ行かなくてもいいのか、「それじゃ是非よろしく。できれば明日の夕方6時くらいでいかがでしょう」とお願いをしました。
 その会話中に他からの着信を知らせるツ、ツ、という音がしていたのですが、電話を切ったらその瞬間にauのお留守番センターにメッセージがあるとの案内があり、かけてみたら「ただいま、いっ。件の伝言をお預かりしています。今日の伝言、いっ。件目」とアナウンスがあって、これが何と2社目の買い取り業者さんからの同様の電話です。ほー、すげーなー、と感心して留守電を切ったその瞬間にまた私の携帯が鳴り、続いて別の買い取り業者から同じように車の現地査定の話が出ました。
 驚くなかれ、こうして次から次へと電話がかかり、わずか30分ほどの間に4社がみんな私の車を見に来ることになってしまったのです。だんだん気が引けてきて、4社目の方には「他に何社もお見えになるんで、無駄足になるかもしれませんよ」と言ったのですが、そんなことはまったく意に介さず「査定業者の数が多い方が、お客様には有利ですよ」なんて言ってくれるじゃありませんか。

 しかし問題は、業者の査定にいちいちつき合わなければならないこと。自分の車を買ってもらうのですから偉そうなことを言うわけには行きませんけど、それでも1回数十分の査定に4回もお付き合いするほどの時間的な余裕が私にはありません。そこで2社目の業者さんからは「明日の夕方6時に別の方が来るんだけど、一緒でもいいですか?」なんて、我ながらよくもここまで図々しく、と思いつつもお願いしてみましたら、「結構ですよ〜」とあっさりOKしてくれました。
 こうして翌日の夕方、私の車の周りには、私を含めてお互いを知らない5人の男が一堂に会することになってしまったのであります。うは。なんだか変な雰囲気〜。

 査定は、実に淡々と、粛々と、行われました。みんな真剣な顔をしています。ある人が車検証を見ている間、別の人は運転席に座っています。もう一人の人はタイヤをチェックし、トランクルームを開けてゴムパッキンの状態を見ている人もいます。みんな無口で、真剣で、ボードにクリップ止めした書類にチェックマークをつけたり、何かを書き込んだり、忙しく働いています。
 ヒマなのは私だけ。ポケットに手を突っ込んでその様子をボーッと眺めながら、みんないい男だ。かっこいい。働く男ってステキだなあ。好きになりそうだ。査定箱でも用意してきたほうがいいかな、と取り留めもないことを考えながら、突っ立っておりました。
 それから30分後。全部の業者の査定が完了しました。残念ながら査定入札箱が間に合わなかったので、皆さんに口頭ではなく、メールで査定価格を知らせてくれるようお願いして、散会となりました。それぞれに散っていく男達。孤独な後ろ姿。素敵でした…。

 生き馬の目を抜く、という言葉がありますが、それにしても世の中がここまで進んでいるとは思いませんでした。聞いてみれば、彼らの仕事は時間との戦い、如何に早く、正確な査定をして適切な価格で買い取れるかが勝負、とのことで、毎日こういうことを繰り返しているんだそうです。というわけで今月の一押しは、インターネット経由での「中古車査定」でした。

 さてここで問題です。ディーラーの査定価格と買い取り業者の査定価格とではどちらが高かったでしょうか。解答は来月まで待ってね〜!


















 なんて意地悪なことはしません。実は、買い取り業者の一番高かった査定価格は、ディーラーの値段よりも何と30万円も高かったの。うわ、すげー、ちょービックリ。よーし、これで欲しかったギターが………、買えるわけないよね〜。

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