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今回の一押しは「伊良湖岬」だあ!

2007年5月31日

 今年の風薫る季節は、私にとっては、あまり風の香りをかぐこともないまま過ぎ去ってしまいました。というのも、5月は会社の税務申告が沢山あって連休中もその後もずーっと書類の山に埋もれていたからなんです。こういうと「あんた、いつも忙しぶってるじゃん」と笑われそうですが、まあ言い訳しても仕方ないんですけど、このページは私のストレス発散の場所でもあるので(笑)ちょっと言わせていただきますと…。
 
 税金講座みたいで恐縮ですが、会社は決算期末から2ヶ月以内に法人税や法人住民税の申告をしなければならない決まりになっています。私たち個人が1年間の所得を集計して翌年の2月から3月にかけて確定申告をするのと同じことですね。
 ただし会社の場合には、何月を決算期末とするかを自由に選択して設定できるルールになっているので、毎月どこかの会社が自社で決めた決算期末を迎え、その2ヶ月後には税務申告をしていることになります。したがって税理士事務所としては、たとえば自分が関与する会社が120社あったら、毎月10社ずつ決算期がめぐってきてくれると業務が均等化できてヒジョーに仕事がやりやすいわけですが、残念ながら我が国には会計年度という慣習があって、ご存じのように国の予算にしても学校の新学期にしてもパブリックなところはみんな4月に始まって3月に終わることになっているわけです。
 だからかどうか知りませんが、民間企業も、特に上場企業などを中心に3月31日を決算期末とする会社が圧倒的に多いんですね。このような事情から我が事務所も、零細ながら、3月に決算を迎える会社にそれなりの数で関与していまして、したがって5月はその申告ラッシュになる、というわけです。私の場合、そんなわけでウイークデーは言うまでもなく、週末だって日曜日だってずっとパソコンと睨めっこしておりました。土曜日はゴルフに行きましたけど…。え?あまり説得力ないすか?

 あー、思いっきり言い訳しちゃいましたねー。さてスッキリしたところで今月の本題に入らせていただきたいと思いますが、今回は一度は触れてみたかった「子供」というテーマについてちょっとお話ししたいと思います。

 このコーナーは、お陰様でそれなりに数多くの無料読者の方(笑)にご愛読頂いておりますが、私の知る限りでもその世代はさまざまです。たとえば@既に第一線を退かれて悠々自適の生活を送っておられる方、A働き盛りで仕事に追われ自由になる時間がなかなか取れない方、B育児真っ盛り世代で子供にまみれる週末を過ごしておられる方、C新婚でそろそろ子供が欲しいなと思い始めている方、D独身貴族を楽しんでおられる方、等々、実に多彩ですね。
 そして概ね、@の方は子供が独立してご自身は親としての社会的責任を果たし終えている、Aの方は家族と接触する時間が少なく、子供たちもそろそろ自立し始め、徐々に孤独を味わいつつある、Bの方は生活は大変だけど家族っていいなあ〜、と幸せをかみしめている、C、Dの方は徐々に家族が増えていくハッピーな家族生活に憧れている、というのが一般的なパターンではないでしょうか。

 私の場合は、Dは記憶の彼方にほとんど消え去り、Cもかなり前に終了し、Bはあっという間に通り過ぎて、現在はAのど真ん中という感じですね。先日インターネットで見たサラリーマン川柳の入選作に「このオレに 暖かいのは 便座だけ」という傑作がありましたが、まあ、心境的にはそれに近いものがあるかもしれません。
 振り返ってみれば、我が家もお陰様で一男一女に恵まれ、二人ともどうにか順調に成長してくれました。育児に関する悩みは、息子が小学生のときに跳び蹴りで塾の壁に大きな穴を開けて先生に呼び出され平謝りしたくらいで、それ以外には大したことはありませんでしたが、今はそれぞれに成長して別々のところで暮らしており、一家離散に近い状況です。普段会う機会はあまりありませんけれども、それでも娘とも息子とも現在も極めて良好な、スネカジリカジラレ関係を維持しております。
 
 子供たちがだんだん年頃になってきて、多くの方から「須田さんもお嬢さんが結婚するときはオイオイ泣くんだろうねー」などとニヤニヤしたザマーミロ的笑顔で冷やかされますが、私はそんなことはないんじゃないかなー、と強がりかもしれませんが勝手に想像しているんです。
 だいたい父親たる者が、なんで娘の結婚式にだらしなくメソメソするんでしょうね。別に戦争に行っちゃうわけじゃないんだし…。私は残念ながら未熟者で、まだ自分の親の葬式と子供の結婚式というものに出席したことがないため想像で言うしかないのですが、娘の結婚式で父親が泣く理由は恐らく次のいずれかではないでしょうか。
@今まで手塩にかけて育ててきた可愛いペットを馬の骨にタダで持っていかれる悔し泣き
A始末に困っていたペットを引き取ってくれる奇特な方が現れたうれし泣き
Bこれで自分が誰にも相手にされなくなるんじゃないかという恐怖から来る孤独泣き
C@からBが全部いっぺんにやってきて感情コントロールが出来なくなる自爆泣き
 ところが私の場合には、娘が高校を卒業して北海道の大学に進学するとき、すなわち今から6年以上も前に実質的に私の手許から巣立ってしまいましたので、上記Aを除いてはいずれの条件にも該当しない、と信じているわけであります。

 あの頃のことを思い出すと、何というか、それまで隣の部屋でピヨピヨと鳴き声が聞こえていたのが、ある朝ガサガサという音がしたと思って部屋をのぞいてみたら、窓が開け放たれフローリングの床に羽根が2,3枚落ちていて、巣がもぬけの殻になっていた、というような感じです。なんだか「鶴の恩返し」みたいですけど(笑)、でもそのくらい突然に彼女は北海道に旅立ってしまったのです。
 娘は今でも可愛いですが小さい頃は本当に可愛くて、この子のためなら自分の命を捨てられるな、と切実に思ったものです。最近はちょっとぐらつくかな…いえいえ、そんなことはありません。

 まだ満足に口もきけない頃から動物が好きで、毎日のように動物図鑑のヘビのページを開いてはニシキヘビやアナコンダの写真に向かって「にょーにょー、にょーにょー(ニョロニョロのこと)」と指さしておりました。気持ちわりー(汗)。その後も首尾一貫して動物に興味を示し続け、カブトムシ、カエル、ドジョウ、文鳥、犬、と徐々に高等動物にシフトしつつペットを飼い続けて、妻がサンマをさばくといえばまな板の横で手を血まみれにしてハラワタを展開図にして「サンマの心臓ってこんなに小さいんだー」と感激し、イカのワタを取ると言えばこれまた分解してスミで遊び、というように段々にグロテスク&ホラー系にシフトし、「人肉まんじゅう」などという恐ろしいビデオを借りてきては父親が貧血気味なのを横目に食い入るようにして鑑賞して、それでも「私は獣医になる」と10年以上言い続けて、ほんとになってしまいました。親バカですけど、なかなか大したもんですわ。

 高校を卒業して北海道の獣医大学に進学したとき、下宿を決めるために私も同行しました。そして札幌から少し離れた駅に降り立ったとき、右も左も見渡す限りの雪景色、猛烈な吹雪の中を大学のキャンパスに向かってよたよた歩きながら、この子をこのままこんなところにひとりぼっちにして本当に大丈夫なんだろうか、とかなり心配しました。
 しかしそんな心配を余所に娘は札幌の大自然の中で着実に成長し、そのお陰で、私は北海道に何度も足を運んで、ずいぶんと見聞を広めることができました。彼女の偉大なところは、自分の友人に父親を次々に紹介することで、まあこれだけカッコイイ父親だから無理もありませんが(ガハハ)、私自身の記憶では親なんて恥ずかしくて友達には絶対見られたくなかったのにと、何とも不思議な感覚です。
 年頃の女の子と離れて暮らしたことも、今にして思えば、彼女との関係をさらに友好なものにすることが出来た原因だろうと思います。人間はわがままな生き物ですから、近くにいれば相手の悪いところばかりが目につきますが、離れていると恋しくなる。今でも会うたびに熱い抱擁を交わしています。うそです。

 そんなわけで私は札幌周辺に行きつけの店もでき、娘の友達とも仲良くなり、あたかも娘が北海道の男性のところにお嫁に行ったような感覚で過ごしてきましたので、今さら雪だるまみたいなウエディング・ドレスなんか着られたってどうってことねーよ、と思っているわけであります。

 その娘が、この春に愛知県の動物病院に就職しました。動物病院といえば、多くの方が犬や猫をイメージされると思いますが、私の娘はなんとブタの専門家を目指しております。父としては、なんでダイワハウスなんだ?なんでブタなんだ?と言いたいところですが、親の言うことを聞くようなタマではありません。それなりの研究と経験から見出した対象なのでしょう。「お父さん、ブタってほんとに可愛いよー」と熱く語ってくれます。でも毎日、ウシやブタのウ○コや血液にまみれて生活しているらしいです。近くにいなくてよかった〜。
 一体どんな暮らしなのか、そういうことに縁のない私には想像もつきませんので、最近の彼女のmixiの日記を引用してしまいます。本人に許可は得ておりません。完全に無断転載です。でも、損害賠償を求められても、自分が自分に支払うようなものですから、まあいいや。

「今日、屠場に連れてってもらいました。屠場ってのは、お肉にする豚さん牛さんをさばくトコね。みんなが食べてる豚肉。牛肉。
 どーやって動いてる豚・牛からお肉の姿になってくか知ってますか…?
 そりゃぁもう、バイオハザードですょ。あまりにグロいので詳しくは言わないけどー。 屠場到着→キレイにシャワー→ベルトコンベアー→電気ショック→…………→お肉
そんな一連の流れをたどって食卓に届くわけです。

あたり一面血の海…
そこらじゅうに豚の顔…
バケットには内臓の山…
きゃー!!
あさって、今日出した豚さんのホルモンとロースをもらいにまた屠場にいってきます。
そんな屠場で今日、ナンパされましたケド。
それも電気ショックしてるおにぃさんに。コラ。」

 どうすか。イメージ湧きました?
 しかし凄いっすねえ、我が子ながら。一面血の海のところにホルモンとロースもらいに行って、そいつを焼いて食うらしいですぜ。おまけに、ブタに電気ショックしてる兄さんにナンパされているらしいっすぜ。ほんとによかった、近くにいなくて…。

 それでも、社会人になった娘の生活が見たくて、実は先月行ってきちゃいました。新幹線に乗って、豊橋で降りて。場所は渥美半島の田原市というところです。
 私はそれまで愛知県には何の縁もなかったので全く知識がありませんでしたが、愛知県の地図を見るとクワガタのハサミみたいな形をした半島が二つありますよね。その向かって右のヤツが渥美半島です。ちなみに左のハサミは知多半島といいます。
 渥美半島は、先っぽに伊良湖岬(「いらこ」ではなく「いらご」と読みます)があり、なかなか風光明媚なところです。でもね、申し訳ないですけど、なーんにもありません。街道をずーっと走っても、時々現れるのはマスクメロン狩りの看板とイチゴ狩りの看板とコンビニくらいのものです。すんげー田舎。
 ちょっと南に行けば、あっという間に雄大な太平洋を目の当たりに出来ます。ここは全国的にも有名なサーフィンのメッカらしく、インターネットで田原市の観光ガイドを見たら、太平洋ロングビーチに「全国からサーファーが終結」と書いてありまして、おいおい、集結じゃなくて終結かよ、サーファーさん終わっちゃうらしいっすよとなかなかユーモラスなミスですが、たまに行くならいいけど、ここで生活するのはねえ…なかなかねえ…都会で育った私にはねえ…という感じでした。

 でも我が娘は、ブタさんのようにブーブー言いつつも、毎日朝早くから夜遅くまで、一人前の獣医師になるための修行に励んでいるようです。きっと太平洋を渡ってくる潮風をたくさん吸って、太陽の光をいっぱい浴びて、また一回り大きく成長してくれるでしょう。
 私が訪ねていったとき、彼女は忙しい中を時間を割いて伊良湖岬に案内してくれました。この先、大人に成長したこの子と生活を共にすることはないんだろうなあと少し感傷的になりながらも、二人で眺めた太平洋はどこまでも青くて、とても素敵な一時を過ごしました。そんなわけで今月の一押しは、娘と幸せな一時を過ごした「伊良湖岬」でした。

 しかし今月はほんとにピーンチだったよー。月末31日の夕方にすべり込みで書き上げました。危うく、「今月の一押し」じゃなくて「先月の一押し」に看板書き換えるところだった…

  

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