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今回の一押しは「お疲れ様」だあ!

2007年7月29日

 今に始まった話ではありませんが、最近の日本語の乱れというのは如何ともし難いですね。そう言う私だって極めていい加減なもので、どこでどんな間違いを犯しているか分かったものではありません。ですからあまり偉そうなことを言うつもりはありませんけれども、それにしても聞くに堪えない言葉遣いの数々に出くわすとストレスがたまります。

 ここのところ、とても気持ち悪く感じるのが「お疲れ様」という言葉で、これについてインターネットで検索してみると、色々な方が色々なことをおっしゃっています。そんな中でも、アルクという語学学校のHPに実に的確な解説が掲載されていましたので、転用させていただきますと、
 「「お疲れ様です」には大きく2種類の用法が認められます。ひとつは(1)他人が何らかの労働や作業に従事したのを労う用法です。もうひとつは(2)共同で労働や作業を行った人同士が互いを労う用法です。
 (1)「お父さん、今日も一日お仕事お疲れ様でした」
 (2)「じゃ、どうもお疲れ様です」「あ、お疲れ様」  」とありました。

 なるほど。確かにそのとおりです。そして私が気持ち悪く感じるのは、専ら(2)の前半部分なのです。
 特に調べたわけではありませんが、「お疲れ様」という言葉の本来の用法は(1)のほうではないでしょうか。仕事をした(終わった)相手に対して、その苦労をねぎらうためにかける言葉。だから職場などでも、先に帰る人が「お先に失礼します」と言えば、それに対して残っている人が「どうもお疲れ様でした」と声を掛けるのはとても自然に感じます。
 ところが最近は、ビジネスの現場などにおいて、仕事が始まる前からこの言葉が使われることが多くなっています。たとえば会議の冒頭の挨拶で司会者が、「え〜皆さま。お疲れ様です。それではこれより○○会議を始めさせていただきます」という具合ですね。

 なんか、ガックリきませんか?まあ、好意的に解釈すれば、「皆さま」がこの会場に来るまでに電車に乗ったり階段を上ったり、いろいろ大変なことがあったでしょうから「お疲れ様です」と言っているとか、あるいは特に直前の出来事を指しているのではなくて、最近仕事がハードで残業も多いみたいだし、みんな大変だねー、だから「お疲れ様です」とねぎらっているとか、そういう話も成り立つとは思うのですが、おじ様の私としては、今から会議を始めようと殺気立っているときに、いきなり「お疲れ様です」はないだろう、と思ってしまうのです。
 最近見つけたヤツでもっと凄いのは、某社の社内連絡シートの冒頭に書かれていた「いつもお疲れ様です」というコメントです。これには結構驚きました。これを書いた人は、きっと「どーもどーも」程度の、あまり深い意味もなくリズムを取る程度に勝手にペンが走ったのだと思いますが、それにしても私は衝撃を受けてしまいました。そんなにヘトヘトになるまで働かされているのか…何か改善する方策はないのか…なんて、余計な心配までしそうになってしまいます。

 会社のあちらこちらで、「おう山田、お疲れ」「あ、先輩。どうもお疲れ様です」などという挨拶が交わされていますが、そこでは既に「疲れる」という言葉が持つ本来の意味は完全に消え失せ、ほとんど「お疲れ」=「こんにちは」というニュアンスになっているように思えます。英語に直訳すれば 'Hi! Yamada, You look tired.' 'Oh,Mr.Sato, You, too.' なんていう感じになるんでしょうが、これじゃあ通じないよね。だから語学は難しい。

 言葉というのは生き物であり、音楽のアドリブのように次々に変化していくところに面白さがあるとは思います。
 しばらく前に息子が、「お父さん、そろそろユキチが欲しいんだけど」と言うので「えー、この前やったばかりだろう、ヒデヨで我慢しとけ」と返したら「そんなこと言わずに。それじゃせめてイチヨウを」と迫ってきましたが、こういう会話はとても楽しいですね。お分かりのように、これは紙幣を人物に置き換えて遊んでいるわけで、当事者に一定のルールが存在します。そして事前にルールの説明をしなくても、そのルールを瞬時に相手が理解するところに醍醐味があるわけです。音楽だって一定の規則の上で遊ぶから面白いので、コード進行を無視して勝手な演奏をしたら、それは「デタラメ」ということになってしまうんですけど。だからやっぱりみんな、もう少し日本語を勉強したほうがいいと思うなー。

 ついでながら、最近気持ち悪く思うことをもう一つご披露しますと、洋服などを買ったとき、店員さんが品物の入った袋をその場でくれず、わざわざ店の出口まで誘導してから手渡してくれるじゃないですか。あれ、なんであんなことするんでしょうかね。ほんとに気持ち悪いんです、私としては。あんなことをするのは洋服屋の業界だけじゃないかしら。
 まあ彼らにしてみれば、お客様を大切にする、だからお客様にお荷物を持たせない、お店のお出口までお見送りする、といった感謝の気持ちを表しているのでしょうけれど、100坪くらいある大型店ならともかく、せいぜい10坪程度のお店でそんなことされてもねえ。それなら一緒に家まで届けてくれなんて、そんなクソジジイみたいなことを言う気はありませんけど、何だかすごく不自然でぎこちなくて、一言で言えば「親切の押し売り」じゃないかなー、と思ってしまいます。
 私の場合、どちらかというと「洋服を買う」という行為それ自体が既に相当こっぱずかしい出来事なので、できることならお金を払ったその瞬間にその荷物をかっさらうようにしてその場からダッシュで逃げ出したいと思っているのに、支払いを済ませた後にそんな儀式が待っていると思うだけで足が遠のきます。ほんとに。隣の店がやればウチもやらなきゃ、というような風潮が蔓延しているとしか思えません。なんとかして欲しいわ。

 ついでだからもう一つ。これは私の業界の、それも男の人にしか分からないことなんだろうと思うのですが、実に不思議で気持ち悪いことがあります。

 それは税務署に設置されているトイレの中のことなんですが、男子用の便器の横に必ずといっていいほど杖(つえ)を挟む金具が取り付けられているのです。
 女性にはまったく関係のない話で申し訳ありませんが、地上1メートルくらいのところに、大きさは恐らく10センチくらいだと思いますが、バネ仕掛けのクワガタのはさみみたいな形をした金具がねじで取り付けられているんですよ。そしてそれが、私の知る限り、東京中のほとんどすべての税務署についているのです。
 ところがですね。私はその金具に杖を取り付けて用を足している方を一度としてみたことがありません。そもそも確定申告の時期を別として、税務署に杖をついた方が入ってくるという光景自体、あまり見慣れたものではありませんよ。

 確かに杖を利用される方にしてみれば、トイレの中というのはタイル張りでツルツルしていて、ものを立てかけておくのには非常に不都合な空間であるということは理解できます。子供のなぞなぞに「最初は四つ足、次は二本足、最後は三本足ってな〜んだ」というのがありましたが、私だって、いずれは杖のお世話になって三本足になるかもしれません。しかしなぜ、税務署のトイレだけに相当の予算と時間をかけてそのようなものが取り付けられているのか。なんで「傘かけ」じゃなく「杖かけ」なのか?おかしいと思いませんか?邪推かなぁ。

 でもこうして文字にしてみると、徐々に疑惑の暗雲が立ちこめてきます。これは報道ステーションに投稿して徹底的に検証すべきなのではないか。そして
ふ○たち「カトーさん、これは一体どういうことなんでしょうか。私などはお役人と業界との間に何か癒着があるのではないか、などと勘ぐってしまうのですが…」
か○う「うーん、そうですねぇ。まぁ、確かにおかしいと言えば言えなくもないような気もしますが…」くらいの会話をしてもらってもいいのではないか。
 
 しかしそうはいうものの、私のリサーチも全く不十分です。投稿する前には、少なくとも次の点くらいは確認・検証しなければなりません。
@杖かけは、東京の税務署に何割くらいの普及率で取り付けられているのか
A東京以外の全国の税務署ではどうなっているのか
B女性用トイレには杖かけは付いていないのか
C警察署や市役所、区役所などの設置状況はどうなのか
D国税の高級官僚に杖を使用している人が何人くらいいるのか
E官僚とそのOBに杖かけのメーカーの関係者はいるのかいないのか

 だんだん面白くなってきました。たとえば@が90%以上で、Aがゼロだったら俄然怪しくなってきます。何かがあぶり出されてきそうです。Cがゼロなら、DとEの解答が大きな話題を呼びそうです。年金問題でクローズアップされた社会保険庁に負けないくらい、一つのお役所にスポットが当たりそうです。
 「国税官僚、杖かけ業界と癒着!」「国税庁長官、陳謝!」なんていう新聞の見出しが目に浮かびます。これが居酒屋だったら、この話題で45分くらいは大いに楽しめそうです。本音を言えば、そんなこと別にどうでもいいんですけど。
 でも、なんか変な感じがするんだよなぁ……。
 というわけで蒸し暑い日々が続くこの頃ですが、そんな今月の一押しは、私に世の中の気持ち悪い出来事を思い出させてくれた「お疲れ様」という言葉でした。
 
 みんな、今度私に会ったときに「よう、お疲れ」とか「あら、須田さんお疲れ様です」なんて言わないでね。もし言ったら1回につきヒデヨ1枚だからな。ほんとだぞ…


 

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