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今回の一押しは「夏の新宿御苑」だあ!

2007年8月30日

 暑いですねえ、ほんとに。私ごときが言うまでもありませんが、今年の夏の暑さは半端ではありません。岐阜県で40度を超えたとか、東京でも37度を記録したとか、猛暑に関するニュースが毎日のように流れていますが、こういうのを聞いていると何だか気温に対する感覚が麻痺してしまいます。たまに33度くらいの日があったりすると「何だ、今日は大したことないな」なんて涼しく感じてしまったり。私の事務所にいる宮古島出身の女性税理士は、「沖縄に避暑に帰りたいな〜」なんて言ってましたが、本気で言っているところが恐いです。

 熱中症で亡くなる方も大勢いらっしゃって、痛ましいことです。熱中症と聞けば、甲子園球場や灼熱のゴルフ場などをイメージしますが、今年は自宅で亡くなる方が多いんですってね。先日テレビで、お年寄りは若い人に比べて体内の水分が少ないので熱中症にかかりやすいです、枕元に水を置いてお休み下さい、なんて大まじめに解説している人がいましたが、年寄りをアジの干物みたいに言うなよ、そんなこと言われなくたって分かってるよ!と暑さのせいでイライラしてしまいました。

 こう暑いと、夢見もよくありません。私はエアコンをつけっぱなしで寝ると必ず体調を崩すので、夜はなるべく自然の冷気を利用するようにしているのですが、最近は窓を開けても冷気じゃなく熱気が入ってきます。
 それでも脂汗をかきながらジッと寝ていたら、隣の部屋の方から何となく人の気配を感じさせる足音がするじゃありませんか。
 やばい。家の中に誰かいる。こんな夜中に暗い家で暴漢と出くわしたら殺されちゃうと思い、私は忍び足でそっと外に出ました。そして庭先から家を振り返ったら、なんと我が家の玄関からグレーの生地に白い縦縞のスーツを着たなぜか「早川」さんという名前まで知っている泥棒が私を追ってくるのです。私は恐怖と立腹がミックスになったドロドロとした気持ちでついにその早川ドロボーと向かい合うことになり、庭先でとっくみあいのけんかを始めてしまいました。そして「おりゃー!」と相手を投げ飛ばした瞬間に目が覚めました。そのとき、かわいそうに我が家の愛犬「はるちゃん」は私に投げ飛ばされ、キャイーンとなきながら和室の壁際で私の方を恨めしそうに見ていたのです。

   
 被害者はるちゃん          

 いやー、はるちゃんビックリしたでしょうね。夜は家の中を放し飼いにしているのですが、きっと私の枕元をウロウロしているときに突然飼い主に「うおー」と鷲づかみにされて投げ飛ばされたんだと思います。はるちゃん、おとーさん寝ぼけちゃっただけだから…。君が憎かったわけじゃないから…。でも夜中におとーさんの枕元を歩き回ったり、顔の上に覆い被さるのはやめたほうがいいよ。ごめんね。ごめんね。ほんとにごめんね。

 こう暑いと、仕事もはかどりません。だから夏休みというのがあるわけですが、みなさんはどこかにお出かけになりましたか?
 私は例年、8月には休みを取らないことにしています。というのも、8月初旬には恒例の路線価の発表があり、それまでに溜まっていた相続税の仕事を何とかしなければならないからです。某社の決算もボリュームがあってなかなか大変だし、お盆の時期はどこに行っても混んでるし、旅行代金も高いし、それなら夏休みは秋休みに変えちゃおうなんて、これが自営業者の有り難いところで、好き勝手やりたい放題なんですね。

 しかし今年の暑さは想定外でした。体がだるくて集中力が湧きません。庭で草むしりをしようと思っても、あまりの日照りに地上に這い出てミイラになったミミズみたいに干からびてしまいそうです。いつもなら週末に職場に仕事をしに行くのですが、日曜日に事務所に出勤した場合には別料金を払わないとエアコンが動きません。大した金額でもないのでその別料金を払えばいいのですが、書斎程度の部屋ならともかく、何十坪もあるオフィスを自分一人だけのために冷やすのは地球温暖化対策上も須田会計事務所の経済政策上も好ましくありません。
 でも窓を開けた程度では書類が腕に貼りつくし、せっかく完成した決算書にポタポタと汗が落ちるし、ジュースのグラスは水滴で水浸しになるし、うちわでパタパタパタパタと扇ぎっぱなしで仕事が全然はかどらないし、効率の悪いことこの上ありません。
  
 そこでふと考えました。「どこかに出かけよう」と。

 実は私、しばらく前から気になっていたことがありまして。それはこのコーナーで今年1月に御紹介した新宿御苑のプラタナス並木なんです。フランス式庭園に設けられた巨大なプラタナスの並木、正月に行ったときは葉がすべて枯れ落ち、幾何学模様のような実にみごとな枝ぶりが印象的だったのですが、これだけ暑い日が続いて太陽の光が燦々と降り注いだら、きっとたわわな緑の葉をまとっているに違いありません。
 どんな感じに変身しているのかな〜と時折思い出しては気にしていたのですが、あまりに近くにありすぎて、なかなか見に行く機会に恵まれませんでした。だからといって何もこんな暑い日にわざわざ出掛けていくこともないのですが、ふとそのとき「森林浴」という言葉が頭に浮かんだのです。

 「森林浴」とか「マイナスイオン」という言葉は、エアコンの冷風が苦手な私には神のささやきのように聞こえます。もともと散歩は好きですし、もしかしたらこんな地獄のような炎天下でも、新宿御苑にだけは爽やかな冷風が流れマイナスイオンが頭上からシャワーのように降っているんじゃないかな〜なんて、暑さのせいでいよいよおかしくなってしまったのでしょうか、砂漠でオアシスの蜃気楼を夢見るような、何だかポワーッとした気分になってしまいました。
 そして気がついたら、新宿御苑の入場口で200円の入場券を購入していたのでした。午後の3時半頃だったので、さすがに炎天下は避けていましたが、それでも新宿駅の東口を出てティファニーの前を通り、伊勢丹の前を歩いていくうちに、首筋から背中にかけて滝のような汗が流れていました。

 ところが、です。御苑のゲートを通って中に入った途端に、強烈な蝉時雨が聞こえてきました。私はこれを聞いただけでも、うれしくて体感温度が0.5度くらい下がるような気がします。我が息子は、ベランダに落ちているアブラゼミの死骸でさえ「それは無理」とか言って処理できない弱虫くんですが、私はセミやカブトムシが大好きです。子供時代の夏休みのさまざまなシーンを思い出します。
 先日ニュースで、クマゼミが光ケーブルに卵を産み付けて被害が続出しているという話を聞きましたが、私、今までにクマゼミの実物は一度しか見たことがありません。運良くシャワシャワシャワシャワという独特の鳴き声が聞こえることがあると、何とか捕まえてみたいと思うのですが、ヤツはだいたい高いところにとまっていて、その姿を見ることができないのですね。実に悔しいです。いつか一匹は捕獲してみたいと思います。

 話がそれました。御苑の中に入って、蝉時雨を浴びながら、日陰を選んで奥へ奥へと進んでいきます。この日も最高気温は35度くらいあったでしょうから、暑いことは暑いです。でも神経を研ぎ澄ませて吹く風に思いを馳せてみると、確かに違うんです。「森林浴」の「し」くらいは感じることができます。
 もっと奥へ進みます。うっそうとした林があります。その中を歩けば「しんり」位まで感じられます。確かに涼しい〜。それも人工的な冷風じゃなくて、本当に自然の冷気です。マイナスイオンは、スイッチがついていないので出ているのかどうかはよく分かりませんが、それでも何となく心が洗われるような気がします。

 周りを見回すと、こんな暑い日なのに園内には結構多くの方がいらっしゃいます。芝生に寝ころんでミイラ…じゃなくて日光浴をされているカップル、木陰のベンチでボーッとしている人。小さい子供は、この暑さの中を元気に走り回っています。やっぱり心が豊かな人々は、正しい避暑の方法をご存じなんですね。地球の温暖化には何の関係もありません。かかるコストもお一人様200円だけです。実に素晴らしいです。
 なんてことをぼんやり考えながら歩いていたら、いよいよフランス式庭園に近づいてきました。あの角を曲がればプラタナスの並木だ、と思い、ふと我に返って冬のイメージを思い出します。皆さんも思い出してくださいね。お正月はこんな感じだったんですよ。

 
 冬のプラタナス並木

 さあ、それがどうなった。はやる心を抑えつつ、一歩ずつ砂利道を進んで、コーナーを曲がります。そして見上げてみたら、うわーーーーーーーーー!!すげーーーーーーーーー!。緑の嵐だ、生命の息吹だ、命のパワーが天に向かって強烈な勢いで燃え上がっています。私は思わず「怒髪天を衝く」という言葉を思い出してしまいました。全然関係ありませんが、京都のお寺などで見かける不動明王像の頭髪、そんなイメージがオーバーラップしてしまったのです。
 恒例の定点観測です。写真をバッチリ撮ってきましたので、季節の変化をお楽しみ下さい。

 
 へーんしん!!

  
 プラタナス並木の遠景          落ち葉を拾ってみました

  
 バラ園も美しい             光と陰の芸術

 どうですか。冬の並木も素敵ですが、夏のプラタナスもなかなかいいでしょ?太陽の光線の具合で、同じ葉っぱが濃く見えたり透き通って見えたり、実に複雑で美しい風景です。というわけで今月の一押しは、酷暑の東京にあっても私に自然の涼しさを垣間見せてくれた「夏の新宿御苑」でした。 

 さあ、森林浴をした後はヨガでもやるか、と思ったら、あれあれ?遠くの空に何かが浮かんでる。あれあれ?入道雲かと思ったらビールの泡だ。夕方になってビールが頭に浮かぶ人はアル中の第一期症状なんですってね。あれあれ?なんかのどが激しく渇いてきたなぁ。汗をたくさんかいたので塩分が足りない気がする…ありゃりゃ?プラタナスの並木が枝豆に見えてきたぞ…。まずい、手が震えてきた。心豊かな私は、急いで生ビールを飲めるところに行こうーっと。

 

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