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今回の一押しは「継続」だあ!

2007年12月30日

 また一年が終わろうとしています。

 光陰矢の如し、本当に時の流れは速いですね。今年は、「偽」が年の字に選ばれるなど明るい話題の少ない、あまりいいイメージの年ではなかったように思われますが、皆さまにとってはどんな一年でしたか?
 私の営む税理士事務所では、年末の税理士試験の発表で朗報を得た人が何人もいて、暮れに来てたくさんの笑顔を見ることができました。すごくいいことがあった人、何となく平凡な一年だった人、とても悲しい出来事にあった人、それぞれだったと思いますが、いずれにしてもこうしてどうにか年の瀬を迎えることができたということを、やはり神様に感謝しなければいけないのかもしれませんね。

 私も、お陰様で大きな事故に遭うこともなく、今年もどうにか健康に一年を過ごすことができました。そんな自分の2007年を恥ずかしながら振り返ってみますと…。

 今年は「企業実務」と「ディーゼルニュースMi・Li」という二つの雑誌に駄文を連載し続けました。前者は日本実業出版社という会社が発行している経理マン向けの専門誌、後者は日産ディーゼルという企業の広報誌です。
 連載という仕事は、最近あまりやったことがなかったのですが、一ヶ月があっという間に過ぎてすぐに次の締め切りが来てしまい、ヒヤヒヤドキドキの連続でした。それに加えてこの「一押し」コーナーの掲載もあったので、毎月3本の連載を抱えていたことになります。何だか作家みたいでしょ?

 でも連載というのは、目の前にニンジンをぶら下げられつつムチを打たれているようなもので、毎回の仕事をヒイヒイ言いながらどうにかこなしていると、いつの間にかその成果が一つの形になっていくんです。お陰様でどちらの仕事もこの年末で最終回を脱稿することができたのですが、特にディーゼルニュースの方は2年間もお付き合いしてきたので、過去の掲載記事を振り返ってみるとそれなりに一つの固まりを残すことができました。仕事って、やっぱり簡単に断ってはいけないんだなぁとつくづく思いました。
 でも終わった今だから言えますが、書いている間は結構ブルーなんですよ。ゴルフ場で林の中を走り回っているときも、深夜にギターの練習をしているときも、頭の端っこの方に「あれ、やんなきゃ」とか「次回はこのテーマにしようかな」などという心配の種がいつも何となく浮かんでいて、心休まるときがないんです。本当に本当なんですから。でもその割にベッドに入ると爆睡してますけど…。だから正直なところ、継続する仕事を頂戴できて大変ありがたいとは思いつつも、「連載なんて二度とやらないぞ」とか「あー、早く終わって楽になりてーなー」などというモヤモヤとした気持ちがいつもあって、締め切りのない気楽な生活にずっと憧れてきたのでした。

 ところが、その舌の根も乾かないうちに前言を翻すようで申し訳ありませんが、つい先日、実際に連載の最終回を書き終えてみたら、急に寂しくなってしまいました。勝手ですね〜。実に不思議です、原稿書きなんてあんなにイヤだったのに。そして自分でも想像しなかったことなのですが、ムラムラと新たな創作意欲まで湧いてきてしまうのです。一体どうなっているんでしょ、私って。まるでB型人間みたいですね〜。あ、B型だった。
 そんなわけで12月に入ってから、また新しい執筆の仕事を引き受けてしまいました。うはは。今度は新刊書の書き下ろしです。実は、振り返ってみると今年の正月も去年の正月も、年末年始の休みはずっと新しい本の原稿書きに追われていたのでした。したがってこれから取りかかる仕事が順調に進めば、ほぼ3年連続で新刊書を出せることになるのです。実にありがたいです、うはははは。自慢するようで申し訳ありませんが、最近の2作品がおかげさまで結構売れ行き好調で、出版社から重版の通知などいただいておりましてアマゾンなんかにも好意的な書評が掲載されていたりするんですよ〜。うは、うはははははははは。よーし、こうなったら印税生活目指して…なんてすぐに皮算用に走ってしまいますけど、でも実際に執筆の作業に取りかかると、実はまた激しくブルーな気分に落ち込んでいくんですのよ。

 一冊の本ができるまでの私の心の動きを、棒グラフ調でご紹介してみますと…
1.出版社から「先生、こういうテーマで弊社からご出版いただけませんか?」なんていうオファーが来たとき → お、いいじゃん。ついに来たか〜というすごくうれしい気持ちに、でもそんな時間とれるかなぁという憂鬱な気持ちが入り交じって 90ポイント
2.本の具体的な内容がまとまって、目次案ができたとき → やばい、こんな凄い本どこにもないし、俺って天才かな、売れたらどうしよう、と興奮して 120ポイント
3.ところが出版社から「この内容で結構です。じゃんじゃんご執筆下さい。それじゃ半年後に」とOKサインが出たとき → ほんとに引き受けちゃったよ、どうしよう…と大切な人に見放されて、奈落の底に突き落とされたような気がして 50ポイント
4.実際に書き始めたら、書けども書けども作業が進まないとき → 締め切りまでに出来なかったらあわせる顔がない、途中で挫折したら何とお詫びしようという思いで胃潰瘍になりそうで 30ポイント
5.気がついたら7割くらいが書き上がって、どうにか形になりそうな実感が湧いてきたとき → おっしゃ〜、この調子で最後まで突っ走るぜ!というファイトが湧いてきて 80ポイント
6.ついに最終行を書き上げて、「出来ましたよ、むはは」なんていうメールを編集担当者に送るとき → ついに出来た、ざまーみろー。温泉にでも行っちゃおうかなー、という開放感で 130ポイント
7.一冊の本が出来上がって書店に並ぶとき → 今までの苦労を思い出して感慨にふけると同時に、大丈夫かな、とんでもない間違いしてないかな、という不安な気持ちが頭をもたげてきて 90ポイント
 こんな感じですかね。今からやってくるこの乱高下を思い、またあの苦しみを繰り返すかと思うと少し憂鬱ですが、でもお仕事をいただけるのは本当に有り難いこと、この正月休みも頑張ってパソコンとにらめっこし、文筆業を継続したいと思います。

 話がそれてしまいました。今年を振り返っていたのでした。
 私は今年、一つ自分に課していたことがあります。それは毎月一回、初めての人と一緒に食事をする、ということなんです。初めての人と言っても、道ですれ違った初対面の女の人に声をかけてお酒を飲みに行くわけではありません。それはそれで楽しいでしょうけれど、残念ながら私はそこまで強い心臓の持ち主ではないのですね。
 そうではなくて、実は私、社員数100人ほどのある会社の経営に最近結構深く関わっていまして、社員が100人もいると仲良くなる人とは繰り返しお酒を飲んだりゴルフに行ったり、友達のような関係になれるのですが、どういうわけか縁がなくて、顔を知っているし勿論会話を交わしたことはあるけれども、じっくり話をしたことがない、という人ができてしまうのです。
 そこで、それはよろしくないと思いまして、関与先の会社のある社長さんが私を毎年一回食事に招待してくれて、その方から「私は社内や社外のいろいろな人と食事をしてさまざまな会話を交わし情報交換をすることを仕事と考えている」というような趣旨のお話を伺ったのに痛く感銘を受けて、私もそれを真似をしてみようと思い立ったわけです。

 ところが始めてすぐに、これは結構大変な仕事だということに気づきました。少し大げさに言うなら、これを継続するには強靱な精神力とタフな肝臓が必要なのです。それでなくてもお酒を飲む機会が少ないわけではないのに、そこにさらに定期的な夜のお付き合いが加わります。共通の話題があまりない人と数時間を過ごすというのは、相手も緊張するでしょうが、私もそれなりに緊張するんですね。そしてその緊張はお酒に向けられることになり、気がつけば結構な酒量をガブガブとやっているのです。酩酊状態です。でもせっかく時間を割いてくれて一緒にお話をしたのに、夜が明けたら何も覚えていない、というのでは相手に対して大変失礼です。だからお酒を殺してちゃんとやらなければなりません。いやー、家族や友達とバカを言いながら飲む酒ってほんとに気楽なんだなー、と改めて気づきました。私には政治家や社交界のトップなんてとても務まりませんわ。
 しかし同時に、こういう機会を通じて、他人に対して自分が抱いているイメージというのは、実に的外れというか相手のことをほとんど正しく理解していないんだな、ということも思い知りました。顔と名前は知っているけれど、ゆっくり時間を過ごしたことがない人。そういう人に対して自分が持つ印象というのは、そのほとんどが第三者からの噂や口伝てによって形成されているんですね。

 正直に言えば、何となく疎遠な人に対しては、「嫌い」というほど強い悪感情を持っているわけではありませんが、しかし同時にそれほどよいイメージを持っているわけでもありません。ところが今回、私にとってのそういうジャンルに属する人と次々に食事を共にしてみて、そのすべての人が実に深みのある、いろいろな人生経験を重ねた、教わることの多い人たちであることに本当に驚いたのです。その素顔は、「あの人はこういう人だ」という先入観のイメージとは全くかけ離れた、情熱的だったり、とても優しかったり、知的だったりとスルメのように噛めば噛むほど味があって、当たり前の話ですが大人には皆それぞれの歴史があり、人柄というのは簡単にジャンル分けできるほど単純なものではないということを思い知らされたのでした。
 一生のうちに出会える人の数なんて、きっと高が知れているとは思います。だからこそ出会いを大切にして、一人でも多くの人と胸襟を開いて話し合えるようにこれからも頑張っていきたいと思いました。このイベントを担当してくれた某社の小泉課長は、これを「須田邦裕十番勝負」と名付けてくれましたが、十番で終わらせずこれからも継続して、エンドレスで続けていければと今は思っています。
  
 話がまたそれてしまいました。今年を振り返っていたのでした。
 出会いといえば、今年はちょっと素敵な経験をしました。私のこの一押しのコーナー、気がつけばもう6年半も続けてしまいまして、数えてみたら今回が78回目になります。そろそろ終わりにしたほうがいいかなと思いつつも、この間、多くの皆さんに励ましやお褒めの言葉をいただき、思いもよらない方から「いつも楽しく読んでますよ」などとお声を掛けていただくことがあったりして、インターネットってほんとに凄いものだなあと感謝しております。でも正直に言うと、楽しいことばかりがあったわけではありませんでした。まったく見ず知らずの人から、匿名で、実に心ない誹謗中傷のメールが届いたりして、どんなことにも付きものなのでしょうが、がっかりすることも経験させられたのです。
 それは初めの頃の「雨を見たかい」というテーマで書いた駄文に集中しているのですが、私がそこに書いた「この歌は、要するにお天気の歌なんです。そして、それだけ。」という文章に、いつの頃からか「バカかお前は」という類の攻撃メールが時折届くようになりました。
 CCRというグループのヒット曲「雨を見たかい」の「雨」とは、空から降ってくる雨ではなく暗に爆弾のことを指していて、すなわちこの歌は反戦歌なんだ、というのがその匿名君たちの言い分なのですが、メール発信者の誰一人として自分の名を名乗る者はなく、反論しようにもそのアドレスは一時的なもので返信してもエラーとなり、要するに言い逃げ、送り逃げのピンポンダッシュみたいなヤツばかりなんですね。私は、こんな卑怯な意気地なしの人たちの言い分を受け入れて自分の文章を訂正したら、覆面攻撃で世の中を変えられるなどと勘違いさせることになり教育上よろしくないと思ってあえて訂正せずに来たのですが、今年、なんと正々堂々と住所氏名を名乗ってそのことを指摘してくれる人が登場したのです。
 その方には、もちろん丁寧に返信をして私の考えをお伝えしました。そうしたら再びメールをいただいて、私の上記のような考え方に賛同してくれたのです。おそらく直接お会いすることはないでしょうが、遠く関西の方にお住まいのその方と心が通じ合ったような気がして、ちょっとうれしい出来事でした。

 寄り道しながら振り返ってきましたが、こうしてみると私のこの一年は、さまざまな出会いに支えられきたような気がします。人として人の世に生まれ、人と接して今まで生きて成長させていただいてきましたので、この喜びを忘れずに、これからも出会いを大切にして、背伸びをせずに生きていきたいと思います。そしてその出会いをもたらしてくれたものは、連載の継続であり、十番勝負の継続であり、この一押しコーナーの継続なのでした。いやー、やっぱり継続は力ですね。そんなわけで今年一年を振り返った今月の一押しは、ちょっとカッコつけてしまいますが「継続」でした。

 一押しの継続といえば、今年は「お疲れ様」や「大丈夫」などの日本語の乱れについて精力的な特集記事を組んでみましたが、その後も相変わらずの大きな乱れに挫けそうになっています。先日も息子と二人で近くの寿司屋にランチを食べに行ったとき、メニューに「満潮」と名づけられた美味そうなセットものがあったので二人意気投合して「これにしよう!」ということになり、注文を取りに来たおばちゃんに私は「この、まんちょうというヤツを2人前お願いします。」と頼みました。
 おばちゃんは「ありがとうございます」とニコニコしながら伝票に何かを書き込みつつ、奥の調理場に向かって大声で「みちしお、にちょ〜!」だって。私はイスから転げ落ちそうになってしまいました。「満ち潮」と「満潮」は違うだろ?満ち潮なら「ち」の字を送っておいてくれよ、ほんとに… 

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