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今回の一押しは「腹八分目」だあ!

2008年01月28日

 一月も下旬となり、お正月気分はとうの昔に消えてしまいましたが、このコーナーは今年初めてですので改めてご挨拶申し上げます。新年明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。
 あ〜、すっきりした。ちなみに頭の中で流れているBGMは宮城道雄作、琴と尺八の名曲「春の海」でした(笑)。

 さて新年第一回目の今回は、皆さまの健康を祈念して、「腹八分目」について考えてみたいと思います。
 なぜこんなテーマを思いついたかといいますと、実は先日、沖縄に旅行なさったある方からとても珍しいお土産を頂いたからなんです。それは「教訓茶碗」というんですが、皆さんご存じでしょうか。
 「八重山焼」という焼き物の一つで、初めて見た人は大概「へー!なんで?」とかなり驚きます。私も全く同じで、最初にその不思議さを目にしたときは体の動きが止まってしまい、何が起きているのか理解できませんでした。そして次の瞬間に「なんじゃこりゃ!」と大声で叫んでしまったのです。

 何がどう不思議なのか、言葉で説明するのはなかなか難しいのですが、商品に同封されていたパンフレットから引用させていただきますと、「八重山では腹八分という実に不思議な茶碗が400年ほど前から伝わっています。茶碗の八分まで水を入れても水はまったく漏らない。ところが、八分以上入れると全部なくなってしまう不思議な茶碗です。何事もほどほどにということで、欲張って腹一杯のことをすればすべてを失うことをこの茶碗は教えております」ということなんです。

 これでも何のことだかよく分かりませんかね。それでは写真をお目にかけましょう。上から見ると、くすんだ色の何の変哲もない茶碗です。いや、そんなことはありません。茶碗の中から、恐いけどちょっとユーモラスな顔をしたシーサー君が顔を出しています。何かがありそうです。当然、この中にタネと仕掛けが詰まっているはずです。
 そして茶碗を裏返すと、何と真ん中に穴が空いております。これはまずい。角田さん、こんな欠陥商品のお土産じゃダメじゃないですか、茶碗の底に穴が空いていたら水もお湯もお茶も、みんな漏れてしまうでしょ〜。と、言いたいところなのですが、あーら不思議、水を入れてもぜーんぜん平気なの。ちゃんと普通の茶碗として機能します。ということは…。裏側の穴は、茶碗の底につながっているわけではない、ということだ。そりゃそうですね。穴が空いている位置とちょうど同じ場所を表から見ると、そこにはシーサー君がいるのですから。すなわち茶碗の裏側の穴は、シーサー君がふさいでくれている、ということなのです。
 あー、よかった。これで安心。この茶碗に芋焼酎でも入れて、シーサー君とにらめっこしながらチビチビ飲んだら結構楽しそうだなー、な〜んて、これで話が終わりになるわけではありません。

  
 かわいい教訓茶碗  裏には穴が…

 その水が入った茶碗にさらに水を注ぐと………。ええーーーーっ!!そ、そんな馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁ!!!#%=FO)Q`x¥?!  って、そんなに驚かなくてもいいのですが(笑)、な、なんと、あるポイントを超えるとたまっている水が先ほどの裏側の穴からザーッと漏れ始めるのです。そして、茶碗は空っぽになってしまいました…。なんで?どういうこと?いやー、ホントに不思議。驚きです。
 いいですか〜、みなさん?(「みのもんた」みたいかしら)。お風呂の浴槽からお湯がこぼれるのとはわけが違うんです。すなわち、あるラインを超えた水が、その超えた部分だけあふれ出るというのではなく、あるラインを超えた瞬間にそこに入っているすべての水が出ていってしまうんですよ。分かりづらいかな〜。
 それじゃこういう場面をイメージしてください。空っぽの浴槽にシーサーのお面をかぶった私がすっぽんぽんで入っています。私は寒くて死にそうです。ガタガタ震えています。そこにお湯が徐々に徐々に足されていきます。私の顔が幸せな笑顔に変わっていきます。そして浴槽一杯にお湯が溜まった瞬間に、ホッとして足を伸ばした私は浴槽内のチェーンに指先を引っかけて水栓を抜いてしまい、すべてのお湯がザーッと流れてしまう。こんな感じです。美しくない図柄ですね。すいません。でも本当にこんな感じなんですよ。実に不思議ですよねー。

  
 水は普通に入るのに    突然漏れ出しちゃう…

 私は最初、シーサー君の像の中に水洗トイレのロータンクみたいな弁でも入っているのかと思いました。でも茶碗を振っても何の音もしません。そもそも小さな焼き物です。そんな小細工ができるはずもありません。そしてそれから30分、ああでもない、こうでもないと考え、ついに正解にたどり着きました。茶碗の断面図まで書いて、理科系獣医師の娘に見てもらって太鼓判をもらいましたので、たぶん合っていると思います。もったいないのでここではその答えはお教えしませんが、茶碗の実物と私の書いた正解断面図を見たい人は手土産(三千円以上に限る)持参の上、拙宅までどうぞ。必ずご覧に入れますぞ。

 さてさて。茶碗の不思議さに興奮してしまいましたが、この茶碗の名前は「教訓茶碗」。そうでした、腹八分目の大切さについて教えていただいたのでした。腹八分目に医者いらず。人間、欲をかいて徳をすることはないのです。

 さんざん言い尽くされてきたことですが、今の私たちの生活はモノが溢れ、物質的にはあまりに豊かになりすぎました。毎年お正月を迎えるたびに思うことですが、季節感は薄れる一方ですよね。そりゃそうです、私が子供の頃にはコンビニなどありませんでしたから、お正月にはすべてのお店が閉まっている。だから親たちは年末に買い出しに行って、おせち料理という保存食を作って、一週間くらい毎日同じものを食べて過ごしたわけです。
 ところが今の暮らしはのべつ幕なしで、大晦日も元旦もコンビニは24時間営業、デパートだって元旦に一日休むだけで、次の日からはおとといまで2万円で売ってたセーターを1万円に値下げしたりして、何だかインチキくさい商売にそれでも行列を作る人で街は黒山の人だかりです。こんなんで本当にいいのかなー。

 そんなことを考えつつ本屋に行ったら、岡田斗司夫さんという方の書かれた「いつまでもデブと思うなよ」という本(新潮新書)が平積みになっていて、やせる前のスラックスをダブダブにはいている著者のとてもショッキングな写真が表紙の帯に掲載されていて面白そうだったので、ついつい買ってしまいました。
 ご存じの方も多いのでしょうが、岡田さんは117キロの体重を1年間で67キロに落とされたとのことで、この本は短期間で50キロもの減量に成功した技術について解説されたものです。とは言っても、そもそも117キロというやせる前の体重が驚異的ですよね。ご本人曰く「夜中に焼き肉食うし、発作的にコンビニへ走ってチョコとか柿の種とか高カロリーなお菓子買いあさって、コーラやファンタを毎日三本もがぶ飲みして」という生活を繰り返していたとのこと。そして「「太っている」という状態は、絶対に「太り続けるような行動」を毎日取らないと維持できない」ということに気がついたとのことです。
 そんなこと、言われなくても普通気がつくでしょ…。何だか随分売れ行きがいいらしいけど、果たして新潮新書として出版するほどの内容の本なのでしょうか(笑)?

 
 岡田さんの本

 そういう、相当ハイレベルな「デブ」の人のお話ですから、私程度の平凡なデブにはあまり実用的なお話ではありませんが、それでもなかなか面白く読ませていただきました。一番面白かったところを少しだけ抜粋させていただきますと…。
「つい一年前まで117キロと思い切り太っていた私は、「デブ」というキャラにまず、あてはめられていた。見た目で、私が他人と圧倒的に違うのは「太っている」という要素だったので、当然だろう。が、いま考えると恐ろしいことに、私はその意味を自覚していなかった。
 もちろん、自分が太っているのは知っていた。が、たったそれだけの理由で、私に対する評価が、まず「太っているヤツ」であり、自動的に「大食い」「だらしない」「明るいけどバカ」「人付き合いが下手」……などのイメージにあてはめられてしまう、とは考えても見なかったのだ。
 (中略)あらゆる職業で、デブは損をする。「幸せそうで悩みもなさそう」という印象から、知的な職業には向かない。論理的に話しても、論理的だと感じてもらえない。知識を披露しても、知的だと見てもらえない。営業や接客にも不向きだ。暑苦しくて、さわやかさがない。どんなに企画力や臨機応変の決断力があろうと、デブというだけでプラスのイメージが阻害されてしまう。どんなデブでも、デブの分だけ損をする。」

 なるほど。まぁ、反論もあるでしょうけれど、確かに一つの真理ではあるような気がします。私も、他人を外見で捉え、一瞬のイメージでこの人はいい人、この人は意地悪な人、と勝手に決めこんでいたことを深く反省しております。でもなぁ、正直なところやっぱり第一印象というのはとても大きくて、グラビアアイドルみたいな弁護士さんに身の上相談したいとは思わないもんなぁ…。でも、ということは自分自身を振り返ってみると、あまりにデブになると税理士という私の仕事にも悪影響が出るかもしれないということかしら。「論理的に話しても、論理的だと感じてもらえない」というのは深刻ですものね。
 それではどうすればいいか。岡田さんによれば、
「「もう少し食べたい」状態で食べ終わって10分ほど経つと「ちょうど満腹」になる。「ちょうど満腹」で食べ終わって10分ほど経つと「食べ過ぎで苦しい」になる。満腹感を出すセンサーは胃袋の上部付近にあるので、満腹サインは、10分ほど遅れて出されるらしい。言うまでもないが、「もう少し食べたい」で箸を置き、あとで「ちょうど満腹」になるのが理想的だ。胃袋が発する「あと少し」というか細いサインに注意して、そこで食事をやめてみよう」ということです。

 あれ?なんだ。要するに腹八分目っていうことじゃん…。ということは、わざわざ本を買って読まなくても、沖縄400年の歴史の教訓茶碗に既にその教えが込められていたのでした。確かにね、欲をかかずに、暴飲暴食を避けて、早寝早起きをして、というごく当たり前のフツーの生活をすれば、それでフツーの寿命まで生きていけるように動物はできているはずなんですよね。我が家の愛犬はるちゃんを見てると本当にそう思いますもの。というわけで今月の一押しは、年頭から皆さまの健康をお祈りしつつ考えた「腹八分目」でした。

 しかし教訓茶碗というのはほんとうによく出来ていまして、八分目を過ぎると中身がジャーッと全部出ていっちゃうんですよ。実にうらやましい。人間の体も、ワインをグラス3杯まではいいけど4杯目を飲んだ瞬間にジャーッと…。すいません、下品なお話をしそうになってしまいました。今年は上品に行くぞー。ほんじゃまたね。  

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