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今回の一押しは「園芸」だあ!

2008年03月30日


 沈丁花が終わり、ソメイヨシノが満開となりました。いよいよ春ですね〜。
 三寒四温とはよく言ったもので、ぽかぽか陽気でもうコートなんか要らないなと思ったら、その翌日は「花冷え」という素敵な言葉がぴったりの冷たい雨に逆戻り。春は素敵な女性のようで、なかなかイエスとは言ってくれないようです。女性の気持ちをたとえる言葉に「女心と秋の空」というのがありますが、私はこういう春の天気こそ女心みたいだと思っているんですが、世の男性諸氏はいかがでしょうかね。

 そういえば最近読んだ、同時通訳で有名な米原万里さんという方の書かれた本の中に、次のような小咄が紹介されていました。
「外交官がyesと言ったら、それはmaybeの意味である。外交官がmaybeと言ったら、それはnoの意味である。外交官がnoと言ったら、その人はすでに外交官としては失格である。
 女性がnoと言ったら、それはmaybeの意味である。女性がmaybeと言ったら、それはyesの意味である。女性がyesと言ったら、その人はすでに女性としては失格である。
 ところで、最近女性の外交官が増えてきたが、では、女性の外交官がyesと言ったら、あるいはnoと言ったら、それはどういう意味なのだろうか。」

 話の出来映えはともかく、この中の「女性がnoと言ったら」というくだりはなかなか興味深いですね。著者の米原さんは、この部分に対して「博物館入りの資格十分な陳腐な女性観」という注釈をつけておられますが、それでも確かに「maybe」なのに「no」と言うのは女性にのみ許される表現のような気もします。
 好きな女性にドキドキしながらプロポーズしたら、「おう、待ってたぜ。もっと早く言えよ」なんて言われたら、男としては嬉しい反面、やっぱり少しショックなんじゃないかな。できればうつむいて頬を赤らめて、消え入るような声で「maybe」くらいの返事をしてほしい。あ、いま頭の中に突然、ベルリオーズの有名な交響曲のメロディが浮かんできてしまいました。確か曲名は「幻想」だったような…。

 さてさて、春の話をしていたのでした。
 先日、春にふさわしく結婚披露宴の席に招かれて、久し振りに華やかな空気を吸ってきました。新郎はかつて私の事務所で働いてくれた遠藤君という優秀な税理士で、必然的に来賓の多くが職業会計人。新郎のお父さんも、主賓の方も、右を見ても左を見ても税理士ばかりです。私は日頃から一匹狼的な生活をしているため、こんなにたくさんの同業者が一堂に会しているのを見るのはとても久し振りで、何だかこそばゆいような照れくさいような不思議な気持ちになってしまいました。そしてどの方も、おめでたい席なので和やかになるのは当然ですが、確定申告を無事に切り抜けたホッとした表情になっておられるのが印象的でした。
 たまたま隣に座った写楽の市川海老蔵のような立派な顔をしたイケメン税理士伊藤君と、お互いの近況報告と情報交換で盛り上がりましたが、ヤツも苦労を重ねた大人の男の顔つきになってきて、厳しい冬山から帰ってきたような自信に満ちあふれたいい表情をしていました。こんなところにも春は確実にやってきているようです。

 この駄文コーナーでも繰り返してお話ししてきましたが、会計事務所の業界は冬の期間が本当に辛く忙しく、みんな心の底から春を待ち望んでいます。その気持ちは、もしかしたら北国で生活されている皆さんに負けないくらいかも、なんて思ったりするくらいです。
 私も例年であれば、3月15日の確定申告期限が到来するのももどかしく、ゴルフに散歩にとメタボなぶくぶくボディを解消するために出掛けていくのですが、残念ながら今年は、まだしばらくの間お預けです。それはね、税理士業が終わった瞬間から作家業に転職しているからなんだよ。うはは。

 私、今年の夏にはまた書き下ろしの新刊書を出版できる予定です。それほど大したものでもありませんけど、でも勿体ぶってその中身についてはまだ申し上げません。ただ今回の作品は、今までのスタイルとは大きく異なる書き方をしているので、我ながら楽しみにしているんですね。
 私は今までに20数冊の本を出版してきました。そのほとんどは絶版ですが(泣)。そしてそれらの本は、偉そうなことを言っても所詮税金の専門書ですから、法律の条文を調べたり国税庁から出ているさまざまな手引きを確認したり、要するに机の上にいろいろな資料をたくさん広げて、あちこちからまる写しにして、いやそうじゃなくて、根拠となる条文を確かめながら間違いのないように書いてきたわけです。
 ところが。いま私が執筆している机の上には、ノートパソコンと食べかけのデコポンがあるだけ。そうです、資料など一切必要とせず、私の心の中から紡ぎ出されるイメージをひたすら文章にしているのです。お、これって作家みたいじゃん。頭の中には、芥川龍之介がどてらを羽織ってペンを持ち、眼光鋭くこちらを睨みつけている写真が浮かんでいます。鏡には、ユニクロで買った2,000円のフリースを着たおじさんが映ってますけど。

 というわけで、地味に宣伝をしてしまいましたが、現在は平日の夜も、土日の休日も、すべて潰してパソコンに向かい、突貫工事に取り組んでおります。楽しみはデコポンだけです。デコポンっておいしいよね〜。
 しかしいくらおいしくても、デコポンだけでは私の心は癒されません。そこでどうするか。パンパカパ〜ン、私は実にいい趣味を見つけてしまいました。それほど時間を必要とせず、それほどお金もかからず、でも楽しくて、飽きなくて、心が癒されて。それは、それは………………………………………………    園芸でした。暗いかしら。 

 我が家には、幸いにしてちょっといたずらをするにはちょうどいい程度の庭があります。しかし忙しくて手入れをしないと、どこからやってくるのか知りませんが野良猫くんたちの道の駅と化し、そこらじゅうにウ○コをされてしまうのです。いろいろ工夫してみたのですが、なかなか名案が浮かびません。ところが経験的に分かったことは、何も植えていないさらさらの地面だと用を足しやすいようですが、植物が植えられているとそこは避けてくれる、ということです。

 そこで私は、花屋さんに行って季節の草花を植えることにしました。しかし美しい花たちも、経験して初めて分かったことですが、愛情を注がないと思うように咲いてくれないんですね。当たり前といえば実に当たり前ですが、いくら地面に植えてあっても、ちゃんと水をやり、定期的に肥料をやり、雑草を取り除くという作業を継続しなければだめなんです。
 そんなのめんどくさいな〜、と思っていたのですが、最近は前述のような事情で、休みの日に終日外出ということができません。パソコンの画面を眺めすぎた後の休憩に、草むしりは実に快適です。ギターを持ってしまうとそのまま1時間くらいすぐに経過してしまいますが、学校の休み時間くらいで何かを済ませようと思ったら、草むしりとか水やりというのはピッタリなんですね。

 そして次に実感できたことは、花たちは手をかけてやるとちゃんとそれに応えてくれる、ということです。ある日突然「今月一杯で辞めさせてください」なんて言いません。「残業代ちゃんと計算してくれてますか?」なんてことも言いません。肥料をやればやった分だけ、こまめに水をあげればその分だけ、実に見事な花を咲かせてくれます。
 私は段々楽しくなってきました。
 音楽は、聞いているその瞬間に心が高揚し、あるいは癒される、本当に素敵なものだと思います。でも残念なことに、聞き終わった瞬間にすべて消え去ってしまいます。すなわちリアルタイムの喜びです。
 しかし園芸は、土を耕したり、雑草を取ったりしているときは、楽しいことなどありません。買ってきた球根がどんな花を咲かせるのか、パンフレットの写真通りになるのか、不安で一杯です。そしてその答えは数ヶ月先にならないと出ないのです。

 何だか育児に似ています。そりゃそうです。どちらも育てているのですから。気長に待たなければなりませんが、でもその分、上手くいったときの感動、満足感は長く続きます。もちろん言葉は通じませんが、でもとても可愛くなってしまうのです。掲載した写真は、すべて我が家の庭の花たちです。可愛いでしょ?そんなわけで今月の一押しは、今私が一番熱中している「園芸」でした。



 以前にも書きましたが、どうも庭いじりと言うとイメージがよろしくありません。声を大にして申し上げますが、私がやっているのは盆栽パッチンじゃないからね。どうでもいいけど、そこんとこよろしく〜。

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