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今回の一押しは「iTunes」だあ!

2008年05月31日


 ど〜も〜。2ヶ月のご無沙汰となってしまいました〜。先月は仕事に追われ完全にテンパってしまいまして、それでも4月30日の夜に「な、なんとか一押しだけは…」とパソコンに向かって見たのですが、すでに体力の限界、矢は尽き、刀折れ、大したアイデアも浮かばないうちにそのまま息絶えてしまったのでした。連続出場記録が途絶えてしまったような感じでとても無念です。この場をお借りして、再度お詫び申し上げます。

 しかし休刊のご案内を掲載した直後から、熱烈な読者の皆さまから復活を望む熱い声、声、声が続々と寄せられるようになりまして、日本全国から黄色い声援のメールが3通ほど届きました(笑)。うれしいです。黄色い声援というくらいですから、すべて女性です。勇気づけられます。そんなわけで今月もまたまた月末ギリギリになってしまいましたが、パソコンに向かってみる気持ちになったわけであります。

 私、最近は「忙しい」が口癖になっているようでヒジョーによろしくありません。大した仕事をしているわけではないのですが、5月のゴールデンウィークはすべて原稿執筆に捧げ、休み明けから昨日までは3月決算法人の決算の打ち合わせと申告書作成に没頭しておりました。息つく暇もありません。息はしてましたけど。
 思い起こせば昨年の暮れから、年末調整に始まり、確定申告、会社決算、相続税の申告など、まるで税理士のような仕事を例年通り次から次へとまとめておりました。そうやって通常の仕事をこなしつつ、その間を縫って実に300ページをオーバーするかという本を一冊書き続けてきたのであります。えらい!よくやった!今月の一押しは須田邦裕だ!と自慢したくなるくらい、今年の上半期は本当によく働いてきたのよ。ヨヨヨ(涙)。

 本を書くというのはかなり体力を消耗する仕事です。長期に渡ってストレスと闘い、ときには挫けそうになりながら、でも誰にも助けてもらえず、とにかくコツコツと1ページずつ自分が書いていかなければ先には進みません。そんなわけですからその分、終わったときの達成感は何物にも代え難いのです。「ぐあ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」と大声で叫びたい気分ですが、世間体があるので叫ぶわけにはいきません。できれば裸になって日の丸の旗かなんかを振りながら外を走り回りたい気分ですが、警察に連行されるのはイヤだからやりません。日本というのはこれでなかなか窮屈な国です。
 ついに最後の1ページを書き終えて、ゴールデンウィーク明けに出版社のYさんに「ふっふっふ。約束は守ったぜぃ」と原稿を渡しまして、強烈な開放感に浸ったあと私がしたことといえば、今までずっと作業を続けてきたコタツを掃除して、ノートパソコンなんか当分見たくもないので全部片付けて、そしてそのままコタツに座ってぼーっとしたくらいです。

 なんか冴えないなぁ…。せっかくこんなに働いたんだから、よく言う「自分にご褒美」をあげたいなぁ。なんでもいいから、ものすごい無駄遣いをしてみたいなぁ。でもよく考えてみると、欲しいものなんてないしなぁ。とフツフツとした思いを抱えつつ、また5月の決算の嵐の中に立ち向かっていたある日、私は実に素晴らしいおもちゃと巡り会ってしまいました。それは「iPod」というやつなんです。

 若者で「iPod」を知らない人はほとんどいないと思いますが、このコーナーは読者層の幅が大変広く老若男女年齢を問わずご愛読頂いているものと推測されますので、ご存じない方のために少しだけ解説させて頂きますと、「iPod(アイポッドと読みます)」というのは一言で言えば「携帯型音楽再生機」です。アメリカのアップルというコンピュータメーカーが開発した製品で、日本ではソニーのウォークマンが有名ですが、それと同じように自分の好きな音楽を録音しておいて、外出先で楽しむことができる小型の機械なんです。

 電車に乗っていると、多くの若者が携帯眺めつつイヤフォンをして自分の世界に閉じこもっている光景を目にします。他人に迷惑をかけないのなら別にどうということはありませんが、ときどきイヤフォンからシャカシャカドンドンこれでもかというくらい不愉快な雑音をまき散らしているヤツがいますよね。また道を歩いていると、後ろから車のクラクションが鳴っているのに全然気づかないアホなヤツもいますよね。
 そんな光景を見るたびに私は腹が立ち、「歩きながら音楽を聴くなんてサイテー」と思ってきました。「あたしさぁ〜、もう一瞬でも音楽がないと生きていけないのぉ〜」なんていうヤツがいると、後頭部をひっぱたいてやろうかと思ってしまうくらいです。だから自分がウォークマンの類を買うなんて、全く考えてもいなかったのです。

 でも。私は買ってしまいました。「iPod」を。ぐししし。

 先ほどご説明した「iPod」という機械のイメージ。そのくらいのことは絵に描いたような中年オヤジの私でも知っていました。でも実際に購入してみて、最近の科学技術の進歩の素晴らしさには本当に驚いてしまいました。外で音楽聞くなんてサイテー、と思っている紳士淑女の皆さま、これを聞くときっとあなたも一度は手に取ってみたくなりますよ。

 私の場合、そもそものことの起こりは「クルマ」でした。皆さんも車に乗ったら好きな音楽を楽しんでおられることと思いますが、最近はカーオーディオも進歩してきましたよね。ちょっといいクルマになると、音楽CDをクルマに持ち込んで再生させるだけで頼みもしないのにその中身がいつの間にかハードディスクに録音され、どんどん蓄積されていく仕組みになっています。こうなるとダッシュボードの辺りがCDでごちゃごちゃすることもなく、実にスマート、かつ快適です。
 残念ながら私の車は最新式でないため、ただでさえ狭いクルマの物入れはCDやMDで占領され、どうにもなりません。今度車を買い換えるときにはハードディスクつきのオーディオにするぞー!と思っていたのですが、ふと疑問が湧きました。その車を売るときには録音した音楽はどうなるんだろ…?

 私はそれほどクルマに詳しいわけではありませんのでもしかすると間違っているのかもしれませんが、きっとその音楽は、消去しない限りそのまま次のオーナーに引き継がれていってしまうのではないでしょうか。まさかハードディスクを取り外して次の車に乗せ替えるというわけにも行かないでしょうし。ということは、もしこれが正解だとしたら、せっせとため込んだ音源は数年の命で消えてしまうということか〜。う〜ん、ちょっとくやしいなぁ。
 そんな話を流行の最先端で生きている息子にしましたら、「だったらiPodをつなげればいいじゃん」と息子様は仰られました(この誤った敬語用法はインテンショナルなものですのでご了承下さい)。え、どういうこと?そんなことできるの?と息子殿下にお伺いを立てつつ、その次の日には息子大王様とともにヨドバシカメラ吉祥寺店に足を運んでしまったのであります。そしたらあなた、ちょっとした工夫をすればiPodをカーステレオに接続することができ、自由自在に音楽を楽しめるということが分かったのでありますよ。
 ということは、クルマの室内からCDやMDは一掃され、スマートな機械が1台置かれているだけで自分の聴きたい音楽がいくらでも出てくる…。パラダイスだ。しかもお目当てのiPod classicという製品は80ギガバイトのディスク容量を有するということで、80ギガバイトと言われても何のことだか実感は湧きませんが、とにかく私が自宅に持っているCDを全部録音してもまだお釣りが来るらしい。エレガントだ。すなわちきっと私がこれから残りの人生で聴く音楽を全部録音しても、多分大丈夫そうな感じ。しかもそれをポケットに入れて持ち歩いて、いつでも再生できて、ということは自宅のオーディオ環境が片手に収まってしまうということで、ビユーティフル!というわけで、そのまま購入してしまったのであります。

 そして一目散に家に帰り、いろいろ研究しましたら、実はiPodというのは氷山の一角だということが分かってきました。その下には、巨大な、先進の、ハイテクな、iTunesという世界が潜んでいるのでありました〜〜。
 これはほんとにすごいです。iTunesというのは無料のソフトウェアで、もしご存じなかったらご自身のパソコンから「iTunes」を検索すればすぐに出てきますので、是非一度お試しください。iPodを買わなくても、このiTunesのすごさを体感するのには費用は全くかかりません。これを知らずにあの世にいったらきっと後悔しますよー。

 大まかな仕組みを御紹介しますと、自分のパソコンをインターネットにつないでiTunesを見つけたら「iTunesフリーダウンロード」というボタンを押します。そうするとあっという間にそのソフトがあなたのパソコンに登録されます。やることはそれだけ。ほんの数分の作業です。しかも費用はゼロ。
 ところが。その後でパソコンのCDドライブに音楽ソフトを入れてみると…。あら〜すごい、その音楽がスルスルとパソコンに取り込まれて行くではあーりませんか。しかもそれと同時にインターネット上で音楽情報のデータベースに接続され、曲名やアルバム名などがあっという間に取り込まれて表示されます。さらに画面上部「詳細」のメニューから「アルバムアートワークを入手する」を選ぶと、なんとアルバムのジャケット写真まで取り込まれてしまうのです。す、すごい、これならCDを買ったのと同じ感覚。しかもプラスチックケースなどの場所を全く取りません。もう完璧です。
 そして一通り音楽CDをiTunesを通じてパソコンに取り込んだら、今度はiPodをパソコンに接続してみます。す、すると、まさに奇跡だ…、自動的に「同期」という作業が始まり、パソコンの中身がすべてiPodにコピーされていくのです。それも驚くほどの短時間で。そしてiPodを動かしてみると、パソコンに取り込んだ膨大な曲が整然と、ジャケット写真付きで、アルファベット順やアルバムタイトル順、あるいはジャンル別に並んでいるではありませんか。凄すぎます。iPodという製品は、購入した時点では全く知りませんでしたが、パソコンを基地とする音楽データベースを自由に持ち出せる携帯電話のようなものだったんですね。
 iPodの電源はパソコンに接続している間に自動的に充電されますし、音楽CDを取り込んでいるときには画面に「iTunes Store」というお店が現れ、その演奏者の他の作品が表示されるしくみになっています。そして「あ、これ聞いてみたい」と思ったら、あらかじめ登録しておいたクレジットカード決済で、1曲数百円で購入できるんです。こりゃたまりません。

 私は、ちょっと夢中になってしまいました。そして夜遅く帰ってきても、自宅にあるCDを毎晩のように次々にパソコンに取り込んで楽しんでいます。録音しながらクリック一つで別の曲を再生することができますので、今までチャイコフスキーの「悲愴」の第1楽章を聞いていたと思ったら、CDの入れ替えをする手間もなく、リー・コニッツのクール・ジャズに移ることができます。
 まだまだ勉強の途中ですが、「Podcast」というメニューにあらかじめ設定をしておくと、日経新聞のダイジェスト版や沖縄の海の映像、英会話教室の教材などを取り込むこともできるようで、その使い方は無限大と言っても過言ではありません。本当に素晴らしい製品です。久し振りに「買ってよかった〜」と思える製品に出会いました。

 そしてその余録として、買い込んだままでしまいっ放しになっていたCDを端から出してきて録音、再生しているうちに、もう数十年も前の曲なのに実に新鮮に聞こえる、という作品をいくつも再発見してしまいました。今私が一番気に入っているのはHerbie Hancock の「Head Hunters」というアルバムです。1973年の作品で、ジャズのなかでも少しアフロな香りのする曲が山盛りですが、長時間にわたって繰り返される単調な旋律とリズム、アフリカのジャングルに潜んでいる動物や黒人たちの叫び声をイメージさせるかのような曲作りが実に新鮮でした。もしご存じない方がいらっしゃったら、「Watermelon Man」は秀逸ですから、是非お試しください。そんなわけで今月の一押しは、音楽的に久し振りに興奮した「iTunes」でした。

 しかしHerbie HancockとかHead Huntersとか横文字で書くから何となくそれらしく見えますけど、日本語に訳したら相当ヤバいですよ。だって「須田さん、最近何聞いてるの?」と聞かれたら、「あ、俺?そうねえ、ハービー・ハンコックの「首狩り族」っていうアルバムがいいかな。なかでも「スイカ男」はかなりいけてるよ」って答えてるんですから。こんな男がマンションの同じフロアに住んでたら、ちょっと後ずさりするよね… 

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