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今回の一押しは「思うこと」だあ!

2008年12月31日
 

 最近、私と息子の間で何となく流行っている言葉があります。それは何の変哲もない「どういうこと?」という言い回しで、二人の間だけでの流行りですから流行語と言えるほどのものではありませんが、これがなかなか面白いんです。
 具体的な使い方はこんな感じです。
父 「あれ?お前いい靴はいてるな。」
息子「あ、これ?いいでしょ。この前買ったんだ。」
父 「この前買ったんだって、そのお金、どこから出てんの?」
息子「そりゃあ、お父さんの財布でしょう。」
父 「は?聞いてないし。それって………どういうこと?」

 「それって」と「どういうこと?」の間にたっぷり間隔を空けて、「どういうこと?」を少し早口で高めの声で一気にしゃべるのが正しい使い方で(笑)、こうすると滑稽さが増して実にいい感じなのです。
 相手を責めたいけど責め言葉をそのまま使うと何となく気まずいときとか、こちらが責めるより前に相手から反省の言葉を引き出したいときなどにはとても便利な表現で、相手の反省を促しつつ、しかもその場の空気を壊さない、なかなか面白い言い回しだと思いませんか?

 これは仕事などでも十分使えますよ。たとえば、
部下「社長、店舗でお客様からのクレームが発生しました。」
社長「あっそう。原因は何なの?」
部下「お客様が店長の顔が気に入らないんだそうです。」
社長「あっそう。顔が気に入らないと言ってるわけね。それって………どういうこと?」とか。

部下「社長、月末の資金がショートしそうです!」
社長「えぇっ?この前銀行から1,000万円借りたばかりじゃないか。原因は何なの?」
部下「あ、そうでした。ごめんなさい。借入金の振替伝票を入力するの、忘れてました。」
社長「おどかすなよ、ほんとに。でもさあ、それって………どういうこと?」とか。

 冗談はさておき、最近の世の中は「それって………どういうこと?」と思うようなことが続出していますよね。分けても、ここ数ヶ月の急速な景気の悪化には驚くばかりです。地球の裏側でサブプライムローンが発端となって信用不安が生じたと思ったら、そのドミノ倒しは津波のように世界中を駆け巡り、ついにというかあっという間にというか、我がアジア諸国にも強烈な勢いで到達してしまいました。
 あの世界のトヨタが、今年度下半期の営業損益で赤字に転落するなんて、一体誰が予測したでしょうか。テレビのニュースや新聞紙上には「派遣切り」「内定取り消し」などの雇用不安を伝える言葉が乱舞し、暮れに来て世の中の話題はますます暗い方向を向いてしまっているようです。

 考えてみれば、経済や政治というのは実に不思議なものですよね。スペースシャトルから見れば、我が地球は相変わらず青い海と白い雲に覆われているはずで、火山が大爆発したなんていう天変地異が生じたわけではなく、太陽の光は毎日さんさんと降り注ぎ、表面上は穏やかで平和な眺めになっているはずです。
 それなのに人の心の中には、いつの間にか「不安」という暗雲が立ちこめて、どんどん不幸になっていく。捨てるほどモノはあふれかえっているのに、食べるものや住むところに困る人が続出するなんて、どうして世の中はうまくいかないのでしょうか。
 巷間よく言われるように、世の中のスピードが速くなりすぎて実物の取引を追い越して「信用」というイメージが暴走し、ついに実物の経済が追いつかなくなって政治のコントロールも効かなくなり、一挙に破綻する。今年の秋以降の経済情勢は、「百年に一度の」などと表現されていますが、本当にバブルが一瞬にしてクラッシュしたかのような凄さを感じます。

 でも私は、不況の原因には群集心理の影響が多分にあると思うのですが、皆さんはいかがでしょうか。テレビで毎日のように「不況だ、不況だ」と言われれば、誰だって「節約した方がいいのかな…」と思うわけで、その小さな節約がスーパーマーケットや百貨店の売上を少しずつ減らし、それが徐々に巨大な竜巻に成長して経済を押し潰す力になっていく。どうもそんな気がしてなりません。
 もし誰もテレビを見なかったら、不況だなんて感じる人はほとんどいないわけで、実際の給料の手取額が変わらなければ消費性向だってそんなに変化しないと思うのですがね。その証拠に、不景気になったとはいえ、私が最近お世話になったレストランはどこも満席でしたし、クリスマスの日のデパ地下のケーキ売り場などは身動きできないほどの人出でごった返していました。今年も多くの企業の年末調整を手がけましたが、私の周りでは給料が半減したなんていう人はほとんどいませんでしたし。

 ですから私は、素人丸出しの発言で申し訳ありませんが、世の中を良くするためには「テレビを見ないこと」と「日本はよくなると思うこと」を実践するのがベストだと思うんです。
 先日テレビを見ていたら(あ、テレビ見ちゃった)、プロゴルファーの片山晋呉選手が実に素晴らしいことを仰っていました。同氏のオフィシャルサイトにも掲載されていますが、「試合に出られなかった'96年、「俺はツアーに優勝できる」という文字をノートに何十回も書きました。紙に書いて自宅の天上、ベッドの上にも貼りました。自分がツアーで優勝するシーンを想像してから寝たこともあります。今の状況をどのように脱出するかではなく、必ずツアーで優勝する!そのためには今、何をするべきなのか?ということを毎日考えていたのです」というのです。
 すなわち、「まず思うこと」。自分のあるべき姿、理想像、目標などを頭に浮かべ、それを繰り返し、何度も、強く思うこと。これが大切だというんですね。

 テレビは、確かに貴重な情報源ではありますが、見る側はまったく以て受動的になってしまいます。自分がテレビと対等であったら、アナウンサーが「えーっ!こんなことが本当にあるんでしょうかぁ!」と絶叫した瞬間に画面がCMに切り替わるなんて絶対に許せないはずです。私は、大切な財産なので自分のテレビに蹴りを入れるようなことはしませんが、そういうシーンを見るたびに腹が立つので、ついにニュース以外は見ないようになりました。日本中のみんながテレビに愛想を尽かしたら、まず一歩、社会は大きく前進するのではないかと思います。

 それから強く思うこと。これも大切ですね。自慢するようで恐縮ですが、私はこの秋からほとんど毎晩欠かさず腹筋運動を130回ずつやっています。
 もちろん最初は20回がやっとでした。でも「美しくなりたい」という思いが支えとなって、徐々に回数を伸ばすことが出来ました。「美しくなりたい」といっても、女性が考える「美」とは違いまして、今からお化粧を覚えようというのではありません。そうではなくて、年齢相応でいたいけど、でも「じじい」になって老け込むのはいやだなあ、という程度の美意識です。つまりもっと正確にいえば「カッコ悪くなりたくない」という願いです。
 人前で話をする機会が多い昨今、風采の上がらないダサいおっさんではいたくない、女の子にキャーキャー言われなくてもいいけど、少なくとも同性には中身も外見も一目置かれる存在でいたい。そういう思いが私を駆り立てています。 

 こういう考え方ってとても大切だな、と思います。たとえばゴルフをやっても、そのことに自分がまじめに取り組んでいなかったら、一生懸命練習している人と一緒にラウンドするのは楽しくありません。結果のスコアがどうかではなく、ゴルフに向き合う態度に明らかな温度差が生じ、同伴競技者に対して失礼だからです。 
 私も最近はゴルフから気持ちが少し遠ざかっていまして、まったく練習していません。したがって自分にとっての「あるべき姿」からは明らかに後退しています。そういうときに心の中で「自分は本当はもう少し上手いんだけど」などと考えながらコースに出掛けて行くのは本当に気が重いし、相手の期待を裏切るのも申し訳ないと思ってしまいます。
 どうせやるなら、ちゃんとやりたい。ゴルフは、また時間を作って練習を重ね、必ず再チャレンジしたいです。

 言い訳めいて恐縮ですが、私には、ゴルフのほかにもう一つ、音楽という趣味があります。こちらは今、相当盛り上がっていまして、年明けのライブに向けて練習に励んでいます。楽器はまじめに練習しているので、また「こういうレベルの演奏をしたい」という明確な思いがあるので、実に楽しいです。
 バンドの仲間はみな練習熱心で、それぞれ忙しい仕事の合間を縫って楽譜を書き直したり、音源を聞き込んだり、イメージトレーニングをしたりしています。それぞれが実際に練習をしているところを見たわけではありませんが、スタジオで会うたびにどんどん腕を上げているのを目の当たりにするので一目瞭然なのです。
 相手がその気なら、私も迷惑をかけるわけにはいきません。密かに自宅でトレーニングして次のスタジオ練習に望みます。仲間は自分の演奏をしながら相手の音を聞いていますから、自分が前回より進歩したところには必ず気づいてくれます。演奏中はニヤッとしたり、うなずく程度ですが、練習後に生ビールを酌み交わしながら「あそこのフレーズ、かっこいいじゃん。練習したんだ?」なんて言われるとたまりません。

 言葉の要らないコミュニケーション。音を通じて育まれる仲間意識。切磋琢磨を繰り返した結果として生じる技術と音楽性の向上。バンド演奏って本当にいいものです。というより、熱い想いを共有する人同士が、音楽を通じて「今よりもっと向上したい」と強く思いあえることが、この上ない連帯感と幸福感を生み出すのです。私は来年も引き続き、下らないテレビなどには目もくれず、ステージで躍動する自分の姿を強く「思って」、仕事に、趣味に、筋トレに精進していくつもりです。
 というわけで今月の一押しは、自分を向上させ、結果として日本がよくなるはずのキーワード、「思うこと」でした。

 みなさま、今年も一年この駄文コーナーにお付き合い下さり、本当にありがとうございました。今年も皆様の「面白かったよ」の声に支えられて、お陰様でヨロヨロとしながらもまた一年続けることができました。
 来年も、このコーナーが100回に到達して読者の皆様からお祝いがたくさん届く姿を強く心に「思って」、もうしばらく続けてみようかと考えております。でも、もし面白くなかったら「これって………どういうこと?」と厳しく叱ってちょーだいね〜。

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