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今回の一押しは「通信販売」だあ!

2009年7月27日
 

 先日、何気なくテレビを見ていたら「夢のみずうみ村」という介護施設を紹介する番組をやっていました。介護施設なんて、申し訳ないけど今の自分には関係ないな、と最初はただ画面を眺めていただけなのですが、そのうちに徐々に引き込まれてしまいました。
 
 「夢のみずうみ村」というのは、山口県にあるデイサービスセンターです。ある日突然脳卒中に襲われ体の自由を奪われた人、高齢で認知症になった人、そんな人たちがここでリハビリの訓練を受けています。と、ここまでの文章を読めば、テレビを見ていた私と同様に「何だかつまらない話」と思われてしまうかもしれません。しかしここからが凄いんです。何が凄いのかというと、この施設ではテレビ番組が「逆転の発想」と名づけた、リハビリに対する特異な考え方を取り入れているのです。
 施設のホームページには、リハビリの理念として次のようなことが書かれています。
(http://www.yumenomizuumi.com/index.html)

 訓練することが生き甲斐ではいけません。
 訓練してつかみ取った能力を使い、
 生きていることを味わい楽しむことがリハビリの目的です。

 幸いにして私は、ある日突然重い病に倒れたという経験がありません。また両親もみな元気でいてくれて、介護の苦労に明け暮れるという経験もしたことがありません。ですから想像にしか過ぎないのですが、自分の体の自由がきかなくなったり、身内の誰かの介護に追われる日々を過ごすことになったら、きっと生活は暗いものになってしまうでしょう。
 実際に番組に登場してインタビューに答えていた女性も、昨日まで主婦として普通の生活をしていたのに、ある日突然半身不随になった。最初は自暴自棄になったと仰っていました。ちなみにこの人は、病気の治療の過程でこの施設と出会い、現在はここで料理の先生として働いています。ご本人は今も片手の自由がきかないとのことですが、そういう人が実際に先生として料理を作り、リハビリ訓練を受ける人たちが周りを囲んで訓練項目の一つとして料理を習う、その場面は大変素晴らしいものでした。
 大きなキャベツを片手だけで包丁を使って切り、手際よくロールキャベツを作っていく。しかもそれを極めて楽しそうに、おいしそうにこなしていく。見事なものでした。その料理の先生は「私は藤原先生(この施設の代表者の藤原氏のこと)と出会って生き甲斐を見つけた、人生が明るくなった」と涙ながらに語っておられました。

 最近の住宅は、高齢者や要介護者のために「バリアフリー」という設計思想が中心になっています。段差をなくし、部屋から部屋へ自由に行き来ができる。体が不自由な人にとってはそのような環境が望ましいのは言うまでもありません。
 ところが「夢のみずうみ村」は、「バリアフリー」ではなく「バリアアリー」になっています。介護施設なのに、至る処に階段や坂道があって、入所者は移動するのも一苦労です。でもそれがリハビリ訓練の一つになっているんですね。まさに逆転の発想です。
 また毎日の訓練内容は、施設の職員に決めてもらうのではなく、数あるメニューから自分で選択して決めます。人は、受動的になるとそれがどんどん加速して、ついに一人では何もできなくなってしまいます。テレビなどはその害悪の最たるものだと思いますが、ここではいつ、どんなリハビリ訓練を受けるかを自分で決める、というシステムになっています。そして自分の時間割を、みんなが見るホワイトボードに記入していくのです。これまた逆転の発想です。
 記入といっても、リハビリ項目が記入されたマグネットシートを貼り付けるだけなので至って簡単です。中には「ぼーっとする」なんていう項目もあります。とっても自由で、病気であるという現実を忘れてしまいそうです。

 リハビリ項目には、なかなか楽しいものがあります。さきほどの料理教室もそうですが、カジノなんてメニューもあります。実際にルーレットやトランプゲーム、花札などの賭場?が開かれていて、勝った人はお金をもらっています。大変な騒ぎです。
 もっともお金といっても本物ではなく、この施設の中でのみ通用する「YUME」とかいう単位の通貨ですが、あるおじいさんは「おらぁこれから金稼ぐんだぁ」と頬を紅潮させて力んでいました。その顔はつやつやしていて、全く病人に見えません。
 ギャンブルで稼いだ「お金」は、施設の売店で花や雑貨品などと交換することができます。また誰もが一年間の目標を立て、たとえば「車椅子と決別する」という目標を立てて実際にリハビリに成功した人は、賞金として500YUMEをもらえるルールになっています。500YUMEと言えば大金ですよ、よく分かりませんけど(笑)。だからみんな賞金をもらおうと思って必死になってリハビリに取り組みます。何から何まで、本人の自主性や意欲を駆り立てる仕組みになっているのです。

 やっぱり人間は欲がなければダメですね。食欲、性欲、金銭欲、地位欲、見栄、プライド。そういったものが一体となって、生きる原動力を生み出しているのでしょう。私なんか欲のかたまりで、今夜は枝豆でビールをプハーッとやりてえとか、週末には自転車で多摩湖まで行っちゃおうかなーとか、そんなことばかり考えながら毎日生きているのです。
 いやー前置きが大変長くなってしまいましたが、「夢のみずうみ村」の経営理念があまりに素晴らしいので、ついついご紹介してしまいました。人間の本能的な欲望を刺激して最大の結果を引き出す、というのはきっとビジネスの現場でも相当効果を発揮するシカケですよね。私の事務所でも、決算をミスなく仕上げた人にはビール1ダースプレゼントとか、週末には有給休暇の取得権をかけておいちょかぶ大会を開くとかやってみようかしら…。

 というわけで今月は、「欲」について語ってみたかったのでした。

 「欲」というのは、実に始末に困るエネルギーです。それがいい方向に作用するときは強じんなパワーとなって表れるのですが、よこしまな気持ちになると全くいい結果をもたらしません。我が人生を振り返ってみても、変な欲を出した瞬間に物事はいつも崩壊しました。そして崩壊することが分かっているのに、その欲望を消し去ることができずに過ちを繰り返してしまいます。
 ここでパーを取れば90が切れる。そういうときに限って力が入り、フォームは崩れ、ボールはとんでもない方向に飛んでいきます。全てがおじゃんになってしまうのです…。

 「隣の芝生が青く見える」という言葉がありますよね。これは、同じものでも他人の所有物の方がよく見えてしまうという人間の心理を表したものだと思います。福沢諭吉先生は、その著書「学問のすゝめ」の中で、人にはさまざまな感情があるが「妬み」だけはいいところが全くない、と戒めています。
 すなわち、たとえばケチというのは悪い性質だが、程度によっては節約という美徳になる。頑固も程度次第では実直と言える。軽薄と俊敏も紙一重。ところが妬みだけは、どんなに程度が軽くても人の美徳になることがない、というのです。
 なるほど。確かに人は人、自分は自分ですよね。だから他人がどんなに素敵なバッグを持っていても、カッコいい車に乗っていても、立派な住宅に住んでいても、そんなことで自分の心がかき乱されるようではいけないのです。

 それはよく分かっています。よく分かっているのですが、実は私、「隣の芝生が青く見える」という言葉の、もう一つの、本当の、実に深〜い、大変な意味を最近知ってしまいました。それはね、隣の芝生が青く見えるのは、隣の芝生が青いのではなくて自宅の芝生がなかなか思うように育たないということなんです…。

 話せば長くなるので細かい経緯は省きますが、現在の我が家には猫の額ほどの庭があります。数年前に手に入れたのですが、これを自分のものとしたとき、その庭は荒れ果てていました。2年以上にわたって人の手が入っていなかったのですから無理もありませんけれども、あまりの惨状にこれは何とかしなくては、と思いました。
 私、もともと庭いじりが嫌いではありません。20代の結婚したばかりの頃にはマンションに住んでいましたが、その頃にもベランダに観葉植物などを買ってきて育てていました。そんなわけですから現在の家に引っ越しても庭のことが気がかりで、すぐに植木屋さんを頼んでバシバシ剪定してもらい、それなりに見栄えがするようにしました。さらにそれからしばらくして芝生を植えることを思い立ち、またまた植木屋さんに頼んで工事をしてもらったのです。
 これできっとゴルフ場のグリーンみたいなヤツができちゃうんだろうな〜、そしたら毎日水をまいて、週末にはこまめに芝刈りなんかして、ついでにパットの練習なんかして、新井さんに差をつけちゃおうかな〜、なんて夢は膨らむ一方だったのです。

 ところが…。

 その芝生は徐々に元気をなくしていきました。おかしいぞ、なんでだろ。緑の葉は、端の方からみるみるうちに茶色く変色していきます。水をやっても、肥料をやっても、全然好転しません。まるで危篤状態です。そしてしばらくして、ち〜ん、ご臨終となりました。
 私、かなりガッカリしました。おかしいじゃ〜ん、ちゃんと水やりだってしてたのに。他の植木は元気なのに。そうだ、そういえば何年か前に芝生の種っていうのを買って物置にしまったままにしてたのがあったような気がする。そいつを蒔いてみよう、と思ってありったけの種を庭中にばらまいてみました。芝生の種は、もみ殻みたいな茶色い粒です。それを庭一面に蒔いたものですから、庭がなんだかゴミ捨て場みたいになってしまいました。
 それからせっせと水やりをしたのですが、一向に芽吹く気配がありません。そうこうするうちに今度はクローバーがジャンジャン生えてきます。赤茶色の細かい葉っぱの、抜いても抜いても弱まる気配を見せない手強いヤツです。くっそ〜黄色い花なんか咲かせちゃって。あー腹が立つ。そして気がつけば我が庭は、私が夢に描いたパッティンググリーンとは似ても似つかぬ赤茶けた砂漠と化していたのでした。


荒れ果てた砂漠のような庭

 今年の春、愛犬はるちゃんといつもの散歩をしていたら、お隣ではありませんがご近所のお宅に見事な芝生が生えているのを目にしました。我が家は砂漠、あちらはオアシス。あまりに悔しいじゃあーりませんか。そこで一念発起、例の植木屋さんに電話して事情を説明し、再度チャレンジしたい旨を伝えました。
 しばらくしてやってきた植木屋さんは、これは土壌の水はけが悪いのかもしれませんね〜とのたまい、土を15pほど掘り起こして芝生用の土と入れ替え、高麗芝を張ってくれることになりました。さあ、今度失敗したら後がありません。私は工事の完了と共に毎日庭を眺め、せっせと水やりをする日々をスタートさせたのです。

 その頃、インターネットで芝生の育成に関する記事をいくつも読み、芝生には苗で育てる方法と種から育てる方法の二つがあることを知りました。そして種から育てる場合には、寒冷地用または暖地用の品種から最適なものを選び、土を耕して種を蒔き、その上に1pほどの土をかぶせて毎日水やりをしなければ発芽しないことも分かってきました。さらに種も生き物なので、使用しないときは冷蔵庫の野菜室に入れ、購入後1年以内に使い切れなければダメだということも知りました。何年間も物置の中にほったらかしにしておいたヤツを花咲爺さんみたいにやみくもにばらまいたって発芽するわけがないんですね。いやー無知とは恐ろしいものです、あはは。
 というわけでそれからというもの、私は芝生博士のようにいろいろ研究を進めます。水やり、芝刈り、雑草の駆除、肥料、それぞれに実に奥深い理論があります。道具も必要です。必然的にお金もかかります。でも私には緑の鮮やかな美しい庭を造るという明確な目的があります。ですから止めるわけにはいきません。

 まず芝刈りです。芝生は、定期的に刈らないと縦にばかり伸びてしまい高密度にならないんだそうです。ですから最低でも週に一度は刈ることが必要です。そこでまずは芝刈り機を購入しました。大した面積でもないので、コードレス充電式のリョービ電動バリカンです。高さは20ミリと設定し、地面にアイロンをかけるようにひたすら刈っていきます。聞こえるのはシャカシャカという機械の音だけ。無心です。そして実に爽快です。キャベツをサクサクと切っているような、ニラをトントンと切っているような、実は炊事はあまりやったことがありませんが(笑)そんな感じです。税理士の私が、汗みどろになって庭に這いつくばって地面にアイロンをかけている姿を想像して下さい。相当滑稽でしょうか?
 肥料も当然に大切です。どんな肥料がいいのか。インターネットでいろいろ調べていたら「となりの芝生になって頂きます」という心に突き刺さるようなキャッチコピーのサイトに行き当たってしまいました。
 「店長イチオシ!」とか「心配しなくて大丈夫」とか「プロも認めた、ゴルフ場で使われている」とか「きわだつ美しさ!」とか、もう頭がクラクラするような言葉が踊っています。現物がどんなものかは分かりませんが、店長がイチオシするならいいんだろうということで、店長が実在するのかどうかも確かめずに肥料を注文してしまいます。
 
 肥料は、粒状になったヤツが手元に届きました。小粒で水にも溶けやすく、なかなかいい製品のように見受けられます。でもそれだけでは足りません。キトサンって知ってますか?エビやカニの甲羅に含まれる成分で、人間も植物も元気にしてくれる凄いヤツです。
 本当にすごいのかどうかは分かりません。でもホームページにそう書いてある以上、信じないわけにはいかないでしょう。果樹に蒔けば、甘い果実がなる。芝生に蒔けば、根がしっかりと張るようになる。ええっ?ほんとかよ。なんでもっと早く気がつかなかったんだろ。私は夢にうなされた半病人のような状態です。いいと言われるものは次々に買ってしまいます。そして次の週末にはキトサンを水で100倍に薄めて、ていねいにまいてやります。

 一度買い物をすると、そのサイトからは定期的にメールが来るようになります。芝刈りに肥料と来れば、次は雑草対策でしょ?確かにそうだ。最近ぽつぽつと広葉の雑草が生え始めたところだ。なんていいタイミングなんだろ。というわけで今度は除草剤の登場です。
 芝生一面に薬をまいても、芝生には影響がなくて雑草だけが枯れていく。そんな都合のいい薬品があるのでしょうか。ちょっと不安でしたが、たましいを吸い取られた半病人の私はやらないわけにはいきません。なになに?広葉の雑草には葉面に薬が染みこまないと効果が出ないので薬をつきやすくする「展着剤」というのが必要だ? 買いましょう、買いましょう、展着剤と除草剤をセットで買いましょう。

 こうして私の芝生養生セットはどんどん増えていきました。実に楽しいです。毎週のように、週末になると通信販売会社から何かの荷物が宅急便で届きます。これをいそいそと開けて、半日は芝生と戯れるのです。誰にも邪魔されません。はるちゃんにはすご〜く邪魔されますけど。
 でも養生の甲斐あって、赤茶けた砂漠は少しずつオアシスっぽくなってきました。ちょっとご覧に入れましょうか。じゃじゃ〜ん、最近の我が芝生の状況です。おお、砂地のバンカーが緑のフェアウェイくらいにはなってきたじゃありませんか。


改良した庭−芝刈り前        芝刈り後

すごーく役立つお手伝いさんの「はるちゃん」

 でも実はまだまだ不満なんです。ゴルフをなさる方はご存じと思いますが、ゴルフ場には、まるでビロードの絨毯のようにきめの細かい芝生がびっしり生えています。パッティンググリーンなんて、芝生一年生の私から見たら奇跡としか言いようがなく、ものすごく短く刈り込んだ芝生が本当に活き活きと生えているのです。それに比べたら我が庭はまだまだ密度は低いし、お話になりません。これを解決するためには店長イチオシのサイトにネットで通い続け、さらに投資と研究を続けなければならないでしょう。というわけで今月の一押しは、一押しの筆者の心を釘付けにしたイチオシサイトの「通信販売」でした。

 先ほどお目にかけた芝生は、お話したように造園業者に高麗芝の苗を施工してもらったものです。ところが我が庭には、これとは別にもう一カ所小さな地面がありまして、こちらの芝生はどういうわけか今回の工事でも壊滅状態となってしまいました。芝生って本当に難しいんですね。
 そこで私は一計を案じ、こちらは苗ではなく種から育ててみる方法で再挑戦することにしました。またまたイチオシサイトで芝生の種を買い込み、その上にかぶせる目土も注文して、いよいよ施工です。
 そして待つこと10日間。あっ!いよいよ発芽してきました。一週間くらいの間なんの変化も起きなかったのでやっぱりダメなのかな〜と意気消沈しておりましたが、ある日気がついたら可愛い緑の芽がポチポチと生え始めていたのです。よ〜し、これであと一月もしたら全面パッティンググリーンかも。その結果は如何に! 来月にご期待下さいませ〜。
 でも来月のこのコーナーで芝生の話題に一言も触れてなかったら、失敗したということなので…。みんなやさしく接してね。


種まき直後と        10日後の様子

 

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