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今回の一押しは「シルバーウィーク」だあ!

2009年9月28日
 

 秋の大型連休、皆さんはどのようにお過ごしでしたか?

 ETC利用者の通行料割引で高速道路はどこも大渋滞だったようで、テレビのニュースでは赤いテールランプが果てしなく続く画面が何度も映し出されていました。政治が変わり世の中の空気も何となく変わってきて、鳩山さんは背は高いしダンディだし上品だし、何だか武士道の日本が突然にヨーロッパのキリスト教国に模様替えしたみたいで、それはそれで人心一新、とてもいいことのような気もします。でも同時に、この先何が起きるか分からないという不安感が何となく付きまとっているのも事実ではないでしょうか。
 ゴルフに行きたくても、もしかしたらとんでもない渋滞に巻き込まれてしまうんじゃないかと思うと気後れする。街にショッピングに行こうと思っても、すごい人混みで道を歩くだけでくたびれてしまう。万事がこんな調子で、この一週間、天気も何となくパッとしませんでしたが、私の休日も今ひとつ冴え渡るものはなかったのです。

 ある朝のテレビ番組で、デパートがテレフォンカードを商品券に交換してくれる、という情報を流していました。この連休中に限り、新宿の京王百貨店に行けば未使用のテレフォンカードを額面と同額の商品券に取り替えてくれるというのです。これはなかなかいいアイディアだなぁと思って机の中を探してみたら、私のところにもノベルティなどで頂いたテレカが結構な枚数眠っていました。
 わざわざそのためだけに出かけていくのも億劫なので、夕方新宿に行く用事があるという息子に託したら、しばらくして電話がかかってきました。「残念でした〜。今日の交換予定枚数は終了だってさ」とのこと。
 へぇ〜、一日の交換枚数が決まってるんだ、なんてどうでもいいことに感心して、それじゃ仕方ない、自分で行ってみようかと帰宅した息子からテレカを受け取り、翌日の朝に今度は私が新宿に出かけてみたのです。

 ところが。

 その日の新宿駅西口は何となく殺気立っていました。京王百貨店の入口には、青白い顔をして眉間にしわを寄せた中年男性のデパート店員が「予定枚数終了」と大書されたプラカードを掲げて、ひたすら謝っています。「お客様、申し訳ありません。本日の交換は終了させて頂きました。」「何言ってんだよ。まだ10時半じゃねーか!」「はい、本当に申し訳ありません。また明日もやっておりますので」「ふざけないでよ〜。詐欺じゃないの?」「………。」
 いや−、大変な騒ぎです。とんでもない事件に巻き込まれてしまったお父さん店員があまりに可哀想なので、私はそっと聞いてみました。「すいません、早い人は何時くらいから来てるんですか?」「はいお客様。一番の方は5時前から並ばれているようです…」

 え、まじすか…。す、すごい。凄すぎる。テレフォンカードの交換のために5時間も行列するなんて。きっとデパートも想定の範囲をはるかに超える反響だったんでしょうね。開店と同時に売り切れちゃうなんて、福袋以上かも知れません。米つきバッタのように謝っている店員さんたちは、きっとこの企画を発案した部署を心から恨んでいることでしょう。
 それにしても一体誰がそんなに長い時間並んでいるんでしょうか。もしかしたら、現役を引退して元気が有り余っているおじいちゃんおばあちゃん達がずらーっと行列しているんじゃないかなあ。
 そもそも何でシルバーウィークというの?5月がゴールデンだから? 敬老の日が入っているから? 最近は「ゲリラ豪雨」とか「アラサー」とかそれまで存在しなかった言葉が突然に市民権を得て、広辞苑に載っていないのがおかしいくらいの勢いになっている現象をよく目にしますが、シルバーウィークなんていう言葉も去年まではこの世に存在していませんでしたよね。でも私の実感としては、年老いてますます元気なじいばあ達のためにあるような気がするなあ。

 そんなわけで結局交換できなかったテレフォンカードを持ったまま、私は新宿の街を30分ほどブラブラして、やっぱり人混みに疲れて家に帰ってきてしまったのでした。さてそれから私は何をしたか。今回は村上春樹さんの小説風にご紹介したいと思います。全く別々のストーリーがパラレルに展開するというパターンですね。


 まず最初に。先月以来の私の心の悩みと言えば、そうです、エリザベスちゃんです。ローガン大統領に邪魔をされ、思うように作業が捗らないクイーンエリザベス号。何のことだか分からない方は、よろしければこのコーナーの先月号「夏の思い出」を斜め読みしてみて下さい。
 とはいうものの、何だかんだと言いながら一旦手をつけたら途中で放り出すことができないこの性分、ペーパークラフトの難工事をそれなりに楽しみつつ、コツコツと少しずつ作業を続けていたのであります。
 先月はパーツを切り出すところの写真をお目にかけましたが、その切り取ったパーツをボンドで貼り合わせると、船体の右側と左側ができてきました。何だかサメの干物みたいです。


サメの干物みたいな船のパーツ



 話は変わりますが、東京の西部に「多摩湖自転車道」というのがあるのをご存じですか。写真の地図をご覧頂くと分かりますが、中央線の武蔵境駅の辺りから西武遊園地のすぐ近くの多摩湖まで、定規で引いたような真っ直ぐなサイクリングロードが整備されているのです。


一直線の多摩湖自転車道   我が愛車「メルセデス号」

 私、最近の流行に便乗し、エコに協力できて、かつ、メタボ対策にもなるということで、自転車を購入してしまったのです。そしてここ数ヶ月は、通勤や仕事の外出でもなるべく車を使わず自転車でチョロチョロと走り回っているのですが、休日には一度このサイクリングロードに挑戦してみたいと思っていたのでした。
 実はしばらく前、自転車購入直後に一度挑戦してみたのですが、小平駅の手前あたりで縁石に乗り上げて後輪がパンクし、あえなく敗退したのでありました。最近の自転車は実によくできており、車体は軽いし変速機は快調だし、スイスイ走ってくれてまさかパンクするなんて夢にも考えていなかったのですが、縁石にガツンと当たったときにはイヤな予感がしました。そしてその数秒後、軽快なシティサイクルはあっという間に金属の固まりと化し、一時はどうしようかと途方に暮れましたが、運のいいことに近くに自転車さんを発見してどうにか事なきを得たのでした。
 そんなわけですから、再挑戦の今回は自転車を慎重に整備し、運転も慎重にして望んだわけです。まずは快適なサイクリングロードの様子をご覧下さい。


美しいサイクリングロード


 エリザベスちゃんの続きです。サメの干物を貼り合わせ、これに甲板のパーツをつなぎ合わせると、あっという間に船らしくなります。お、既にクイーンエリザベス号の風格らしきものが…。
 船尾部分の曲線はなかなか大変です。二次元の平面の紙を少しずつ折り曲げて立体にするだけだって難しいのに、これにカーブを描かせて船の構造体にするのは容易ではありません。骨の折れる作業です。深夜に黙々と、一人で工事を進めます。ふと横を見ると、愛犬はるちゃんが「つまんねえの…」という恨めしそうな顔をしながらふて寝をしています。はるちゃん、ごめんね〜。


急に船らしくなってきました。 船尾の曲線も美しい…


緻密な感じですが…。  はるちゃんはふてくされています。


 多摩湖自転車道は、頻繁に車道と交差するため、片道10qをガーッと走り抜けるというわけにはいきません。ところどころに設けられている車両止めの逆U字型鉄パイプをすり抜けていく必要があり、どちらかというと障害物競走みたいです。
 それでもそろそろトイレに行きたいなぁと思えば沿線にちゃんとトイレが現れるし、水飲み場、公園、お地蔵さん?など、実にさまざまな設備が用意されていてサイクリングを快適に楽しむことができます。また路面には起点からの距離を表すマイルストーンがところどころに設置されています。以前にご紹介した皇居一周の散歩道を彷彿とさせます。


トイレもあるし、      距離表示板もあります。


謎の物体A          謎の物体B


 その後のエリザベスちゃんです。また日を改めて作業を進めています。船体の土台が出来上がったら今度は細かいパーツの加工です。
 艦橋部分を取り付けたら、続いて煙突を作ります。煙突も曲線のパーツです。長方形に切り取った部品を、指先で少しずつ丸めて筒形にし、のりしろにボンドをつけて接着します。こういうパーツでは、接着剤を薄くつけるとすぐに剥がれちゃうし、たくさんつけすぎるとはみ出してしまって著しく美観を損ねることになりますので、注意が必要です。根を詰めた作業で、一時間くらいはあっという間に経過してしまいます。あー、楽しい。


前の煙突に続いて…    後ろの煙突も。

 大きな部品は比較的短時間で作業が進み、見た目にも「おお、かっこいいじゃん」とうれしくなるのですが、工事が後半にさしかかってくると細かい部品の連続で心が挫けそうになります。こんな細かいパーツを切り出して、しかも中をくりぬいて一つの部品にしなければなりません。「今夜はもうやめようかな〜」「いや、あと少し」「そろそろ終わりにしようかな〜」「もうちょっと」と、写真には写っていませんが心の中では葛藤が繰り返されています。
 でも細かくて大変な部品ほど、取り付けると複雑な感じがして作品のリアルさが増すのです。それにしても作る私も大変だけど、これを設計した人は大したもんですね。現実の船からペーパークラフト用にある程度デフォルメして、でも全体のバランスは本物に忠実な縮尺でサイズ設計がされているに違いありません。私には想像もつきませんが、きっと試行錯誤を繰り返して製品化しているのでしょう。実に素晴らしいと思います。


細かい部品をくりぬいて…  折り曲げて仕上げます。   



 サイクリングロードは、道路そのものもよく整備されていますが、沿線の景色もすごく素敵です。特筆すべきは、植えられている植物の種類の多さです。巨大なヒマワリがあります。ぶどう園があります。栗の木もありますし、クリも売っています。季節ではありませんがブルーベリー園もありました。サトイモの巨大な葉っぱがありました。整然と並んだキャベツの畑も見事なものです。ザクロもなっています。キウイの畑もあります。ススキの穂も金色に輝いています。ここって東京?と疑いたくなるくらい自然が豊富です。


妖怪のようなヒマワリ     大きなクリの木の下で〜


巨大な里芋の葉っぱ     巨大なキャベツ畑

 花もたくさん咲いています。秋の花、曼珠沙華の群生がありました。ムラサキシキブも美しい紫色の実をつけています。ムクゲの大きな花も美しく咲いています。よく分かりませんが、「畑のおじさん」の看板もありました。いやー、本当に素晴らしい。


秋といえば曼珠沙華    可憐なムラサキシキブ


美しいムクゲの花と、    「畑のおじさん」

 細かな部品が取り付けられるにつれて、クイーンエリザベス号の気品ある美しいイメージが完成に近づいていきます。艦首も艦尾も甲板も、どこから眺めても実に美しい。あ〜そろそろ完成だなと思ったら、最後にとんでもない試練が待ち受けていました。なんと救命ボートを26隻も作らなければなりません。


細かい救命ボート      やっとできました。

 26隻…。 何でそんなにたくさん作らなきゃいけないの?と思っても、本物のクイーンエリザベスちゃんについているのだから仕方がありません。同じ作業の繰り返しはかなり苦痛ですが、ここで手を抜いてやっつけ工事をしてしまっては中島誠之助先生に「いい仕事してますねぇ〜」と誉めてもらうことはできません。友人の一級建築士が「マンションの図面引きは似たような作業の繰り返しだからつまらないんだよね」と言っていたのを思い出しながら、無心でボートを製作していきます。そしてついに、そしてついに、悲願のクイーンエリザベス号は完成したのでありました。ジャジャ〜ン、いかがですか?美しいでしょう?


ついに完成!         細部も美しい〜


 多摩湖自転車道もいよいよゴール間際です。多摩湖自転車道というくらいですから、目的地は多摩湖です。別名、村山貯水池です。そして貯水池というくらいですから、山の上の方にあります。ということは必然的に登り坂になるわけです。10qをスイスイと走ってきましたが、知らない間に足に疲れが溜まっています。その最後に、この登り坂はきつい…。ハアハアヒイヒイいいながら、変速機を一番軽いポジションにセットしてどうにか登り切りました。そして開けた景色の先には…。
 うぉ〜、美しい。とても大都市東京とは思えないような、実に広大な景色が広がっています。鏡のような静寂な水面。青空に浮かんだ白い雲が、まるで印象派の絵画のようです。ルネッサンス様式のクラシックな取水塔も心に残ります。遙か遠くに目をやると、西武球場の白いドーム屋根がまるでUFOのように鎮座しています。そう言えば西武園ゴルフ場の何番ホールだっけなぁ、ロングホールのティーグラウンドからこの白いドーム屋根が巨大に見えるんだよなぁ、なんてどうでもいいことを思い出しながら、登り坂で疲れた体を休めつつこの雄大な景色をしばらく眺めていました。


最後の坂を登り切れば…   美しい多摩湖が待っています。


雄大な多摩湖の眺め     水面が鏡のようです。

 東京はいいところです。広いようで狭く、狭いようで広い。もう半世紀もこの東京の空の下で生きてきたのに、まだまだ知らないところが沢山あります。今回の連休では、インドアで久し振りのペーパークラフトを完成させ、アウトドアでは新たなサイクリングライフに一歩を踏み出すことができました。それもこれも秋の連休のお陰です。というわけで今月の一押しは「シルバーウィーク」でした。

 ところでサイクリングといえば「レンタサイクルの乗り捨て」というのがあるのをご存じですか。レンタカーと同じように、借りた車を借りたお店に返しに行くのではなく、自分の都合に合わせて別の店に返却できるという便利なシステムです。
 このとても便利な「乗り捨て」のシステムですが、私の友人はこれを本当にどこにでも乗り捨てていいシステムだと思い込んでいたらしいですよ。田んぼの中だとか…。バス停の脇だとか…。好きなときに好きなところへ置いてっちゃうんですって。そんなねえ…。あり得ないですよねえ。ああ受ける(笑)。そんなことしたら街中に自転車が転がっていることになっちゃうじゃないですか(笑)。あ〜、おかしすぎる………。

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