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今回の一押しは「ノースサファリサッポロ」だあ!

2009年11月30日
 

 それは今を去ること数ヶ月前、確かまだ夏の盛りの頃だったと思います。群馬にいる娘がある日我が家に帰って来てこんなことを言いました。「お父さん、11月に札幌で友達の結婚式があるんだけどさぁ、一緒に行く?」

 その話を聞いたとき、一瞬のうちに私の心にはさまざまな思いが浮かびました。えぇっ?札幌かぁ…。行きたいなぁ。 でもお前、調子のいいこと言って父のスネをかじろうとしてるんだろ! だけど久し振りだし行きたいよなぁ。  連休だと飛行機代も宿泊費も結構かかるぞ。 ま、いっかぁ。滅多にないチャンスだから…。などと心の中でブツブツつぶやきつつ、早速パソコンの前に座ります。

 お前ねぇ、早く予約しないと連休は混むから飛行機もホテルも取れないかもよ。え?全部お父さんが手配するの?なんて渋い顔して一応文句だけは言いつつ、慣れた手つきでいそいそといつものサイトにアクセスします。そして倒産しかかった航空会社の飛行機も無事に手配がつき、札幌行きはあっという間に決定したのでありました。

 それから待つこと数ヶ月。いよいよ今月の下旬になって、その日はやってきました。前夜遅くに群馬から帰宅した娘と二人で、早朝の吉祥寺駅から中央線から山手線、そして京急に乗り継ぎ、憧れの羽田空港に到着します。その日は快晴で抜けるような青空。連休で空港はかなり混雑していましたが、滑走路は美しく活気に満ちあふれています。いよいよ娘と二人の珍道中、札幌旅行のスタートです。というわけで今回は、皆様に一足早い冬の便りをお届けいたしましょう。

 科学技術の進歩は本当に素晴らしいです。座席モニターに映し出された計器によれば、飛行機は最高時速1,000qの猛スピードで高度1万メートルの上空を順調に飛び続け、満員の乗客を乗せた大型ジェット機は何のトラブルもなくあっという間に新千歳空港に到着しました。窓から外を見ると、一面の雪景色。さっきまでの快晴だった東京の空が嘘のようです。日本は広い!と旅行気分はどんどん高まっていきます。


快晴の羽田と          雪景色の千歳         

 とはいうものの。
 娘は友人の結婚披露宴に出席するために北海道に来たのですから、すぐに別行動になります。ホテルに荷物を置いて、美容院に行って、それから式場に直行だそうです。
 さて一人になった私は何をするか…。午後の半端な時間で、どこかに遠出するほどの余裕もないし、そもそも冬の北海道はどこもかしこも雪景色で一人でウロウロするのは危険だし寂しいし、行くあてが思いつきません。そこでいろいろ熟考した結果………。そうだ、あそこに行ってみよう!ということで札幌駅前のユニクロに行きました(笑)。

 いやー、それにしてもユニクロはすごいです。札幌店は、東京吉祥寺のショップよりずっと大きな店舗面積でしたが、それを埋め尽くす人、人、人。ものすごい混雑です。ざっと見渡したところ、レジは10台以上あったように記憶していますが、それでも会計待ちの人がとんでもない長い行列を作っています。でも店員さんの案内が上手なので、文句を言う人はいません。そして列はスムーズに流れ、あっという間に自分の順番が回ってきます。
 寒い北海道のお店だから、東京とは違う品揃えなのかなあと思いましたが、吉祥寺と全く同じでした(笑)。これまたすごいです。色とりどりのフリース、 Japan Technology のヒートテック、信じられない安値のセーターや下着、靴下など。見ているだけで楽しくなってしまい、一瞬、吉祥寺にいるような錯覚に陥りました。私の目的は、そのまま脱ぎ捨ててきてもいい防寒着でしたが、安くて品質がいいのでついつい色々と買ってしまいます。私は一体何しに札幌に来たのでしょう。


札幌駅ビルと          札幌駅前のロフト

 さて、安価でカラフルな冬支度を調えた私は、大きな荷物を提げて外に出ました。夕飯には未だ早いし、さすがに零度近い気温では手足が冷たく、ゆっくり散策するという雰囲気でもありません。北大の植物園もこの時期はクローズしていて、見学することはできません。どうしようかなぁ、と途方に暮れていたら、今度は LOFT の黄色い看板が目に入りました。これも吉祥寺にあるのと同じお店です。しかも、なんと!「クリスマスに移りマス」とかいうキャッチコピーのポスターがあちこちに貼ってあって、どうも移転前のセールをやっているらしい。
 暖かいし、面白そうだし、ユニクロを出た私は、そのまま LOFT に吸い込まれていきました。ますます北海道来訪の目的が不明確になります。しかも運のいいことに、閉店前の店内はどの商品も20% OFF!の大セール。そんなに興奮することはないんですけど、でも何だかうれしくなってしまいます。そして気がついたら私、ケロヨンみたいな緑色のスーツケースを買ってしまいました……。
 だって娘に言われてたんですよ。お父さん、手提げバッグよりキャスター付きのスーツケースの方が楽だよって。しかも通常の2割引ですよ。買うしかないでしょ。というわけでユニクロのフリースをスーツケースの中にしまい込み、さっきチェックインしたばかりのホテルのフロントにまた大きなスーツケースを持って登場し、何だか気まずい思いをして鍵を受け取って、ようやく初日の午後の買い物は終了しました。
 そしてその日の夜は、ススキノの寿司屋で一人物思いに耽りつつ、地元の銘酒「男山」と「国稀」をチビチビやりながら新鮮な魚介類に舌鼓を打ったのでありました。ほろ酔い気分でホテルに戻るとき、毎度のことながら大通り公園のテレビ塔とその先の時計台の前を通りましたが、今回もとても美しくライトアップされておりました。


美しいテレビ塔     言わずと知れた時計台

 さてその翌日。
 結婚式の○次会まで飲み歩いてきた娘は、真夜中に帰ってきましたが、さすがに若者。寝不足をものともせず、短い滞在時間を惜しむようにいそいそと遊びの計画を立てます。まずは前夜にヒマな父が首尾よく手配しておいたレンタカー会社に行ってスタッドレス付きの小型車を借り、スイスイと街を飛び出しました。さすが6年間住み慣れた街、娘は地図やカーナビなど頼りにしなくても、どこにでも行けます。私は助手席であくびしているだけ。実にらくちんです。
 
 まず最初に腹ごしらえをしなければなりません。といっても迷う必要など全くありません。なぜなら、いろいろ経験したあげく札幌で食べるものと言えば回転寿司の「トリトン」、ジンギスカンの「だるま」、そしてスープカレーの「ラマイ」の三つは外せないと決まっているからです。迷うとすればその順番と組み合わせだけ。今回はまず「トリトン」の回転寿司から始めることに意見が一致し、札幌市の東方、娘が通っていた大学近くの店舗に直行となりました。
 その写真をちょっとお目にかけましょうか。本当にやばいです。うますぎます。そして信じられないくらい安価です。日頃、東京の新宿や銀座で夜な夜な接待に明け暮れている身としては、何か計算が間違っているんじゃないの?と言いたくなるくらいの価格設定です。現在我が国の経済はデフレ状態に突入中とのことですが、この際、デフレに頭を突っ込んでしまいたいと思うくらい幸せな気分になります。一皿200円から300円で、皿からこぼれ落ちそうなくらい分厚くてプリプリのホタテが目の前に現れます。あ〜思い出しただけでもよだれが出てくる。


激ウマの寿司たち。丸いお皿は気にしないでね〜

 あっという間に満腹の幸せ絶頂になった二人は、それから懐かしい娘の大学に行ってみることにしました。初冬の札幌は、未だ全面雪景色というところまでは行きませんでしたが、それでも道路は凍てつき、風は頬を突き刺すようです。美しいすずかけの街路樹は、葉を落として枝ぶりをあらわにし、芸術的な造形を青空に映し出していました。
 しばらく牛舎やサイロを散策し、可愛い牛たちの様子を観察した後、今度は一路札幌の西の郊外、定山渓(じょうざんけい)温泉を目指します。
 といっても、主たる目的は温泉ではありません。何と動物園です。え? 定山渓に動物園なんてあるの? しかもこんな冬に…? しかしさすが獣医師の先生、動物に関しては半端ではない知識をお持ちです。その1時間後、私は今まで経験したことのない面白い光景をいくつも目にしてしまったのでした。


美しい大学キャンパスの風景

 目指したのは「ノースサファリサッポロ」という動物園です。北海道の動物園といえば旭川動物園が有名ですが、こちらノースサファリも、すごく小さいけれどそれに負けないくらいインパクトがありましたよ。だって色々な動物が園内のあちこちを自由に歩き回っているのですから。


動物園へと続く道      動物園のライオン像

 まず入口には巨大なホワイトライオンの像があります。このライオンの口の中を通って園内に入ります。最初に現れたのはモモイロペリカンとビーバーです。ビーバー君はひっきりなしにニンジンを食べています。これに対してペリカン君は、人形かと思うくらいジッとしています。でもときどき大きなくちばしを開けて、ユーモラスな表情を見せてくれます。間違いなく生きています。そして実に可愛いです。


可愛らしいビーバー君と    モモイロペリカン

 
 続いて次の門を開けると、今度はマーラ君がいました。マーラという動物は初めて見たような気がしますが、うさぎのような、ねずみのような、全身を栗色の毛に覆われ、真っ黒な瞳が可愛い、実に穏やかな動物です。何だかとっても癒されます。


獣医さんとマーラ君

 しばらくマーラ君と遊んだ後、次の門をくぐると、何とシマウマがいました…。え? シマウマ? シマウマって、確かアフリカにいるんじゃなかったっけ? 象やキリンがいる草原に群れをなして走り回っているはずのシマウマ君が、こんな寒いところにいて大丈夫なの? と思わず心配になりましたが、意外に元気そうです。何だかすごく不思議な気分になります。
 そんな不思議な気分のまま、次のコーナーに行ったら、今度はニホンザルのマリコがいました。私、マリコが苦手です。いや間違えました。ニホンザルが苦手です。子供のとき、檻の中のニホンザルをからかって蹴飛ばしたら、その足を捕まれて死にそうな思いをしました。それ以来どうも相性が悪く、干支は申年なのにサルが嫌いになってしまいました。そんな私の心を見透かしたのか、マリコは私に向かって攻撃的な態度を取っています。おかしいじゃん、よく似た顔の娘と二人で歩いているのに何で私だけ?
 こちらからは何もけしかけていないのに、マリコは真っ赤な顔をして歯をむき出しにして、私に向かってウ〜ッと唸っています。きゃー恐い〜。だから俺はマリコが苦手なんだよー。間違えた、ニホンザルが苦手なんだよー。


かわいいシマウマ君と       可愛くないマリコ

 というわけでサルのコーナーを早々に退散し、今度はイノシシのコーナーに行こうとしたちょうどそのとき、園内放送が流れました。「ご来園の皆さま〜。熱帯館で間もなくニシキヘビとのふれあい体験が始まります〜。ふるってご参加下さい〜。」
 「……。」イヤな予感がします。ニシキヘビとはできれば触れあいたくありません。というか、そばにだって行きたくありません。もっと素直に言えば、見たくもありません。同じ建物の中にいるというだけで、私のDNAに刻まれた遙か昔の恐竜たちにさんざんやっつけられた祖先の恐怖の記憶がよみがえります。ところが横にいる娘を見ると、目が輝いてニコニコしています。イヤな予感は的中しました。さすが獣医さん、娘は昔からそういうのが大好きなのです。
 
 あ〜、いやだ〜、行きたくない〜と思いつつも、気がつけば私たちは熱帯館の中に入っていました。熱帯館といっても、ビニールハウスと呼んだ方が適切な、そんな小屋です。外は雪景色なのに、中はストーブがガンガンに焚かれ、汗ばむほどの気温になっています。恐る恐る入口を開けて中に入ると、まず大きなリクガメがいました。微動だにしません。生きているのか死んでいるのか、確かめようと思って近づいたら、その横にイグアナがいました。イグアナなのか、オオトカゲなのか、私には区別がつきませんし、そんなことは正直どうでもいいです。あー、気持ち悪い。


トカゲ君…

 どこに何が隠れているのか分からなくて何だか気分が落ち着きません。振り返って横を見ると、巨大なナマケモノが木からぶら下がっています。とにかくそういう得体の知れない生き物が、檻に入っているわけでもなく、その辺をウロウロしているのです。そして奥の方を見ると、ギェーッ、い、いました〜、ビルマニシキヘビが…。見ただけで鳥肌が立ちます。黄色のまだら模様の、ツヤツヤと光ったウロコ。ぼってりと太った体長2メートルはあろうかというすごいヤツです。
 
 そのニシキヘビを、何とニコニコ笑顔のスタッフおねえさんが首に巻いて立っているではありませんか。そしてふれあい体験とは、その大蛇をお客さんが順番に首に巻いて記念撮影をしようというプランらしいです。見た瞬間に私の足は出口に向かいましたが、娘は何と「お父さんもやろーよ」と持ちかけます。私は「むりむりむりむり。絶対にむり。まったくむり。ありえない。ほんとむり。」とまくし立てましたが、娘はやる気満々です。
 そして順番が回ってきて、ついに娘はその大蛇を首に巻いてもらいました。すげー。なんとうれしそうな顔をしています。私は震える手で写真を何枚か撮りました。「お父さん、かわいいよ〜。せっかくだから巻いてみればいいのに」とこっちに近づいてきます。
 「こら。来るな。俺のことはいいから。お願いだからそっちに行って」と逃げ回り、どうにか恐怖の体験から脱出することができました。


ギョエ〜 気持ち悪いよ〜

 その後は、フクロウの飛行見学です。これこそ東京では見ることが出来ない、素晴らしいものでした。
 遠くの方にフクロウがいます。スタッフの女性が合図をすると、フクロウはその女性をめがけて美しい弧を描いて滑空し、腕にとまります。ご褒美にウズラの生肉をもらっています。実に見事なものです。ワシやフクロウなどの猛禽類は、野ウサギなどを捕らえて食べるとのことですが、なんとワシよりもフクロウの方が狩りが上手なんですって。というのは、ワシは羽音がバサバサと鳴るのに対し、フクロウは全くの無音で滑空できるため、獲物は敵の存在に直前まで気づかないからなんだそうです。
 一口にフクロウといっても、その種類は豊富で顔つきも色も大きさもさまざまです。そんなさまざまなフクロウたちが、雪景色の森のあちこちの止まり木に、これもさわれるくらいの近さで飼われていました。とっても神秘的です。
 北海道は自然の宝庫です。今回、久し振りに訪れることができましたが、その美しさを再認識することができました。特に札幌近郊のこの動物園は、実に楽しくてお勧めです。というわけで今月の一押しは「ノースサファリサッポロ(http://north-safari.com/)」でした。


可愛いフクロウたち



 さて、皆様に長らくご愛読頂いて参りました「須田邦裕の今月の一押し」ですが、今回を以て一旦筆を置かせて頂くことにしました。
 思い起こせば平成13年7月に会計事務所のホームページを立ち上げ、コンテンツを何とか面白くしたいというだけの思いで始めたこの「一押し」のコーナーですが、自分自身も楽しむことができ、さまざまな読者の方からの励ましのお言葉も頂いて、今まで足かけ9年の長きにわたり続けてきてしまいました。計算してみましたら、今回が101回目。2008年4月に1回さぼってしまいましたので、実質的には今回がちょうど100回ということになります。

 以前は書きたいことが沢山あって月1回では足りないくらいだったのですが、正直なところ最近は何かと多忙になり、だんだんつらくなって参りました。このまま続ければ次に切りがいいのは200回ですが、今の心境としてはそこまで続ける自信がありません。思い上がりを許して頂くなら、惜しまれるうちに去りたい、というのが偽らざる本音です。
 思い上がりついでに言えば、お陰様で私自身の文章力も徐々に上達し、始めの頃に比べればずいぶん面白くなったなぁと思います。第1回目の「ぢんぢんぢん」は総文字数851字、これに対して前回99回目の「亀石」は5,101字という字数です。ボリュームにして約6倍、多ければいいというわけではありませんけれども、それでもちょっとした読み物レベルにはなったのかなと思いますし、何よりこの9年間の訓練で、頭に浮かんだイメージを比較的短時間で文章に変換する技術を身につけることができました。これもひとえに、このページを応援して下さった皆様のご支援の賜と深く感謝申し上げます。

 「そろそろやめようかと思うんだよ」と一押し登場回数最多の私の二人の子供達、娘と息子に相談したとき、意外なことに二人とも反対してくれました。
 「なんで?」「みんな楽しみにしてるのに?」「読者たくさんいるんでしょ?」と言われ、日頃はあまり話題にしないけれど、二人ともそれなりに楽しんでくれていたんだと嬉しくなりました。私自身も、この100回の中には実にさまざまな思い出が詰まっていますし私自身の歴史でもありますので、今でもやめるのはもったいないなぁという思いが胸をよぎります。本当にこの9年間、どこに行くにも何をするにも、一押しのことを考えないときはありませんでした。プライベートの生活は、そのほとんどが一押しの取材に充てられた、と言っても過言ではありません。
 そんな迷いの中、娘から実に素晴らしい提案をされました。「疲れたのなら一旦休止にして、「一押しリターンズ」で再開すればいいじゃん!」ですって。なるほど、そういう手があったか。これでずいぶん気が楽になりました。ほんじゃまた近いうちに再開するかもしれないので、みなさんここはとりあえず「臨時休業」ということにしておいて下さい。うはは。

 皆様、長い間のご愛読、本当にありがとうございました。最後に大変厚かましいですが、読者の皆様に一つだけお願いがあります。次の再開に備えて、皆様のメールアドレスをお知らせ頂けませんでしょうか。もしかして再開するときにはその旨のご案内を差し上げたいと思いますので。
 そしてお送り下さるときは、ついでにご意見や今までのご感想なども添えて下さると大変励みになります。気が向いた方はどうぞよろしくお願いします。メールの送信先は私のアドレスですが、そのまま書くと悪用されかねない物騒な世の中ですので、音でお伝えします。「クニヒロ アットマーク スダ ドット ジーアール ドット ジェイピー」です。この音をすべて小文字のアルファベットに変換して下さい。うまく送信できない場合は「mail@suda.gr.jp」に頂いても結構です。

 それでは皆様、長い間本当にありがとうございました。またどこかでお目にかかれる日を楽しみにしております。

 

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