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分離課税とは

税金の本などを読むと「分離課税」という言葉がよく出てきますが、これはどういう意味ですか。

他の所得とは区別して単独で税金を計算するやり方を分離課税といいます。
分離課税は、累進税率の影響を受けずに課税したい所得に適用されます。

解説

1.総合課税と分離課税
所得の高い人ほど重い負担率で納税してもらう。これが現代の所得税制の基本的な考え方です。この場合、所得の高さは1年間の収入をすべて合算して初めて判定できるもので、たとえば給料は給料、利息収入は利息収入というように別々にカウントしたのでは意味がありません。つまり1課税期間の所得をすべて合算することが、累進課税制度の前提となるわけです。このように、さまざまな所得を合算して一つの課税対象とするやり方を「総合課税」といいます。総合された所得に累進税率を適用するのが、能力に応じた課税を実現するために必要な仕組みというわけです。
これに対して、他の所得とは区別して、独自に税金を計算するやり方を「分離課税」といいます。分離課税は、上記のような考え方からすればあまり導入すべきものではありませんので、次のような場合に限って適用されます。
①累進税率が悪影響を及ぼすとき…退職金など希に多額の所得が発生する場合、これを通常通り課税すると同年中の他の所得に対する税率も跳ね上がってしまいます。そのような悪影響をさけるため、退職金は分離課税されます。
②総合課税を適正に運用できる保証がないとき…預金の利子などは口座の数だけ発生するので、これを人別に集計するのは大変な作業であり、結果として脱税をチェックすることができません。そこで預金利子等は無差別に20%の源泉徴収で分離課税することとしています。
③制度のわかりやすさを第一義としたいとき…いわゆる土地税制は、地価の高騰を抑制し宅地の供給を促進するために、アメとムチの政策として導入されています。この場合「この土地を売ったらいくら税金がかかるか」ということがすぐに分からなければ、政策の効果が発揮できません。そこで不動産の売却益に対しては、同年中の他の所得の有無に関わらず一定の税率で税金が計算されるしくみとなっています。

2.退職金の課税のしくみ
退職金は、一般的には、永年の勤務の成果として一時に多額の金銭を受け取る形で実現します。その収入には、それを得るための経費はありませんので、そのまま課税したらかなりの税負担になってしまいます。また上述のように、これを総合課税したら、同年中の他の所得にも高い累進税率が適用されて全体的な税負担も上昇することになります。しかし退職金は、老後の生活資金となるものであり、あまり高額の税金をかけることは適切でありません。そこで退職所得は次のように課税することとされています。
①所得金額の計算
退職所得は、まずその収入金額から「退職所得控除額」を控除します。退職所得控除額とは、その勤務にかかる勤続年数に1年当たり40万円(21年目以降は1年当たり70万円)を乗じた金額です。したがって勤続年数20年の場合には800万円(40万円×20年)、同30年の場合には1,500万円(40万円×20年+70万円×10年)が控除額となるわけです。そしてさらに、その控除後の金額を2分の1とした金額が所得金額となります(つまり半額しか課税されないということです)。
②税額の計算
上記①で算出された退職所得の金額は、それ独自で所得税の累進税率を適用して課税されます。したがって同年中の他の所得に影響を及ぼすことがありませんし、上述のように所得金額の計算自体が大変優遇されているので、税負担はかなり緩和されることになります。
(平成22年4月現在の法令に基づく)

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