須田邦裕の「今月の一押し!!」
2003.02.23  今回の一押しは「TOWER RECORD吉祥寺店」だあ!
  季節は二月。如月(きさらぎ)。まだまだ寒さは厳しいですが、その寒さの中にもどことなく春の訪れを予感させる香りを感じます。花の香り?それとも日射し?たまに少し暖かい日があったりすると、もうすぐ春だ。あと少しの我慢だ。あー春よ早く来い、と憧れに近い気持ちを抱いてしまいます。
 それはなぜか。私、今の季節はとにかく忙しいんです。悲しいくらいに。だから春が来て、確定申告が終わって、ボーッとできる季節が人一倍恋しいの。お、街路樹に新芽が出てる。お、沈丁花のつぼみが膨らんできた。俺も膨らんじゃうぞーってな感じ。

 そんな日々、他に方法がないので溜まるストレスは音楽で発散しております。ここ数ヶ月は音楽CDを何枚も買ってしまいました。物書きの端くれの私としては、ツタヤに行ってCD借りてきてダビングするなんてことは許せません。素晴らしい作品を提供してくれるミュージシャンに敬意を表して、ちゃんとお金を払ってCDを買う。そしてその一部が印税としてしっかり作者に支払われて、もっといい作品を提供していただく。財布の中から夏目漱石さんを何枚か出しながら、「これでうまい酒でも飲んでくれや」と心に念じつつ。これは大切なことですよ。話が脱線しちゃいましたが。

 そんなわけで、今回は最近聞いた中からお勧めの作品をいくつかご紹介しましょう。まず最初は、ダントツ、ピカイチ、スンゲー奴。それはダイアナ・クラール(Diana Krall)さんというピアニストのライブ・イン・パリという作品。ダイアナさんというくらいだから女性です。そしてライブ・イン・パリというくらいだから、スタジオ録音ではありません。レイトリーのマスターも言ってましたが、ライブ出すくらいだから腕に自身があるのです。
 それも半端ではありません。ジャンルはジャズです。ということはアドリブ演奏があります。目を閉じて聞いていると絶対に男。そのくらいパワーがあります。ジャズコードを押さえる指の固まりを鍵盤にぶつけております。荒削りなところも感じますが、批判すれば切りがない。私は素直に脱帽してしまいました。
 しかもすごいことに、ピアノを弾きながら歌を歌う。その声がまた魅力的。最初に聞いたときは、雰囲気のあるピアノカルテット(ギターも入っております)をバックに歌う、女性ヴォーカリストのアルバムだと思ってしまいました。ちょっとハスキーでリズミカル。本当にいい声です。天は二物を与えずと言いますが、この人は二物を与えてもらったようです。ずるい。
 さらにさらにすごいことに、どうもなかなかいい女のようです。ジャケット写真でははっきりとは分かりませんが、知性を感じさせる横顔。DVDも出ているらしいので、目下これを買うべきか検討中。とりあえずCDだけでも是非一度おためし下さい。

 次の一枚は、ジョン・ピザレリ(John Pizzarelli)というギタリストのアイム・ヒップ(I'm Hip)という作品。アイム・ヒップって何でしょう。私はケツ?よくわかりません。そんなことはともかく、この作品はギター2本とベースのバンドで録音されています。ということは、ドラムなし。あーそれなのにそれなのに、そんなことをまったく感じさせないリズム感の良さ。アコースティックでスインギーで、とっても楽しめる一枚です。
 この人もギターを弾きながら歌っておりますが、ちょっと鼻にかかる甘い素敵な声で、なかなかのものですよ。ルート66などのスタンダードナンバーも入っており、これからジャズにチャレンジしてみようかなという人にもうってつけだと思います。

 さて、とりあえず今月の一押しアルバムを二枚ほどご紹介しましたが、実は私が今回一番押したいのは、これらのアルバムを紹介してくれたお店。それはTower Record吉祥寺店なのだ。3階のジャズコーナーに行くとお勧めアルバムが試聴用ヘッドフォン付きで並んでおります。そこに書かれたコメントがなかなか的確で、担当の方の見識にいつも敬意を表しているのです。火のないところに水煙。全然買う気がなかったのに、このコーナーに行くとついつい買ってしまうからあら不思議。これぞ小売業の極意かも。そんなわけで今月の一押しは「タワーレコード吉祥寺店のジャズ新譜コーナー」でした。それにしても早く確定申告終わらないかなぁ…

 


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