須田邦裕の「今月の一押し!!」
2002.04.15  今回の一押しは「新井さん」だあ!
 人生にはさまざまな出会いがあります。なんかドラマのナレーションみたいな書き出しですね。自分でちゃかしてどうする。もう一度最初から。
 人生にはさまざまな出会いがあります。そして人の一生のうちには、自分の人生観や生き方にものすごく大きな影響を与えてくれる人との出会いが、少なくとも3回くらいはあるのではないでしょうか。私にも、過去を振り返ってみると、素晴らしい人に出会って、その影響を受けて、まるで霧が晴れたように感じたことが何度かあります。今回はそんなお話を少し。

 新井さん。荒井さん。新居さん。いろいろなアライさんがいますが、今回のアライさんは新井さんです。どこの新井さんかは、まあどうでもいいわけで、新井さんのプライバシーもありますし、詳しくは申し上げません。とにかく私の大切な友達の一人です。
 新井さんとは、かつては仕事上でのお付き合いをしていましたが、色々なことがあって今ではゴルフだけでつながった友達となりました。それがまたとても大切な環境なのかもしれません。とにかく遊び以外の余計なファクターは何も存在せず、したがってビジネスにおける貸しとか借りとか義理とか人情とか、そんなものは一切ないのですから。

 月に一度か二度、ゴルフ場で会って、ゴルフ場で別れます。朝早く、私がゴルフ場に着くと、大体新井さんの車は既に駐車場のいつもの場所に止めてあって、そして既に練習をしています。私がアイアンの練習に向かう頃には、既にパターの練習場でじっくりボールを打って最後の仕上げをしているのです。そして「よう」と軽く手を挙げ、「今頃来たのかよ」というような、ちょっと自信に満ちた表情をするのです。夏の暑いときなんか、いそいそと魔法瓶タイプの水筒に粉末のポカリスエットかなんか溶かしてきちゃって、ぼそっと「おれ夕べうれしくてあんまり眠れなかった」なんて言ったりします。

 新井さんは、すごく真面目に遊ぶ人です。私は、この一点だけで、新井さんを敬愛しています。ゴルフ以外にも、スキューバダイビング、スキー、山歩きと、とにかく一年中何かしています。ある時「新井さんって忙しい人だよねえ。一体いつ仕事するの?」と聞いたら「暇なとき」と言ってました。そのくらい真面目に遊ぶ人です。
 その中でも、恐らくゴルフはかなり上位を占めるのではないでしょうか。だから新井さんは、ゴルフに真剣に取り組んでいます。そして調子がいいと、基本的に寡黙になります。何を話しかけても「ああ」とか「うん」程度の返事しか帰ってこないとき、そういうときの新井さんはとても恐い。ゴルフはほぼ同時期に始めたのですが、一時はどうやっても勝てないなあというくらい強いゴルフをしていました。大叩きはしない。ミスをしても大騒ぎしない。ヘビのように静かに淡々とスコアを重ねる。ゴルファーなら分かると思うけど、こういう人はいやですね。だからこちらも、新井さんには負けたくないという気持ちを駆り立てられます。

 あるとき雪が降りました。雪が降って、それでもどうにかゴルフ場にたどり着いて、コースの人が今日はクローズだと言っているのに、新井さんは帰ろうとしません。なぜならもしかすると雪が溶けるかもしれないと考えているからです。そんなことはないっちゅうのに。新井さんはそのくらい真剣です。だから風邪を引いていても、腰を痛めていても、どんなことがあっても決して言い訳せず、ちゃんとコースに現れます。さすがにスキーで鎖骨を折ったときは、数ヶ月休みましたが、それでも驚異的な早さで復活する。無心です。ただゴルフが好きなだけ?そういう意見もありますが、でもそこまで打ち込める強さは一体どこからくるのでしょうか。もしかすると、もう人生捨てているんじゃないかと思うときすらある。すごいです。そして心から信頼しています。ゴルフではこの人に裏切られることはないと。

 私は新井さんから、口に出して言われたわけではありませんが、何かやるならそれが何であっても一生懸命やらなきゃダメだ、ということを教わりました。今も教わり続けています。「遊びだから」こんな簡単な言い訳はありません。でも新井さんにはそんな言葉は通用しません。遊びを、仕事をなげうってでも一生懸命やる。有給休暇なんかみんな使い切っちゃう(かどうかは知りませんが)。それでも足りなきゃ親戚中の法事を順番にやる(かどうかは知りませんが)。私も、新井さんと出会ってから、仕事も遊びも一生懸命やる、正確に言うと、仕事は当然のこととして遊びを心して一生懸命に遊ぶ、ということをテーマにするようになりました。遊びも、適当にやったり逃げていてはダメなんですね。最近そのことが少し分かってきたような気がします。まだまだ新井さんの足許にも及びませんが。
 そんなわけで今月の一押しは「新井さん」でした。ほんと、みんなにも紹介したいよ。

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