須田邦裕の「今月の一押し!!」
2003.01.14  一年の計再び
 新年明けましておめでとうございます。本年もどうかよろしくおつきあい下さい。

 何にしても、新しいということは気持ちがいいものですね。年が改まり、過去の出来事はとりあえず忘れて、また新たな目標に向かってチャレンジする。チャレンジは正月でなくてもできるわけですが、日本中が「新年」「新年」と言っているときに自分も気持ちを切り替えて新たな目標を持つ。一年の計はやはり大切なことだと思います。
 一年前のこのコーナーで、私は「落語家のような」を標榜して一年を華々しく(自分で勝手にそう思っているだけですが)スタートしました。そしてそれなりの成果があったように思います。そこで今年も一年の計を思案するに際し、人生の先輩の色々な方のお言葉に耳を傾けてみました。

 正月のテレビでゴルフ番組をやってました。一年の計にしては品格が急に落ちるようですが、そんなことはありません。なぜなら私はその番組で大きな感動を受けたからです。皆さんも恐らくご存じの中島常幸プロ。長いスランプに苦しみ、昨年奇跡的にカムバックして優勝した日本を代表するプロゴルファーです。その中島プロがインタビューの中で次のようなことを言っておられました。
 すなわち、私はつらいスランプに苦しみ今再び優勝することができて、ライバルの競技者の素晴らしいプレーに心から拍手できるようになった。以前は相手が失敗すればいいと思うこともあったが、ミスした選手に勝って何がうれしいか。相手が素晴らしいプレーをしたらそれを心から褒め讃え、自分がそれを上回る素晴らしいプレーをして、そして勝つ。これ以上の喜びはありません、と。
 どうです。すごい言葉だとは思いませんか。プロゴルフの世界は、たった一打の差が何百万円、何千万円にもなってしまう恐ろしい世界だと思います。あいつがいなければ大金が手に入るのに。そう思うのが普通でしょうが、その敵に拍手を送れる心のゆとり。想像を絶する苦しみを抜け出して、本当に自信をつかんだ人だからこその言葉ではないでしょうか。そういうセリフを私も吐けるようになりたい。

 本年1月7日付の日経新聞に、「いろは歌450年経て響く心」というタイトルで川畑耕二さんという出版社の社長さんがコラムを書いておられるのが目に入りました。その冒頭で、島津忠良(島津家の中興の祖。16世紀に活躍し「日新公」と呼ばれた)が作成した「日新公いろは歌」の中から次の歌が紹介されていました。
 いにしへの 道を聞きても 唱へても わが行いに せずばかひなし
 「その通り!ズバリ賞です」と思わず膝を叩いてしまいました。450年も昔に、不遜な言い方ですが今の私と同じ感覚を持った大先輩が、既にこの教訓を部下に教えるために分かりやすい和歌にしておられたのです。これも相当すごい。現代語訳すると「屁理屈言ってねえで早くやれ。実行あるのみだよーん」というところでしょうか。
 私も最近は「やってみる」を信条としています。行きたいと思ったところには行ってみる。欲しいと思ったものは買ってみる。つまらないプライドは捨てる。髭なんか伸ばしてみる。人にどう思われるかは後回し。今年はこれをさらに強力に押し進めたい。

 だいぶ前のうろ覚えのことなので、もしかしたら全然違っているかもしれませんが、日経ベンチャーという雑誌にパチンコ機器メーカー会長の中島健吉さんのインタビューが掲載され、同氏が「蓄財は技術、散財は芸術」という言葉を述べておられました。これが非常に印象的で、ことある度に思い出します。
 お金を貯めるのはテクニックで、それを使うのはアートだというんですね。何という奥深い言葉なんでしょう。お金を貯めるということ、すなわちビジネスを成功させるということ。それ自体生やさしいことではありませんし、凡人にはなかなか達成できない大きな目標です。でも所詮、蓄財は技術。その蓄えたお金を何に使うかでその人の本当の価値が分かるというわけです。お金の使い方は本当に難しいですよね。
 ビジネスで言えば、人とモノ。誰に投資し、どんな設備投資をするか。それが事業者の経営哲学や能力を表す指標になります。またプライベートな世界では、その人の食べ物の嗜好、ファッション、住まい、乗っている車、趣味など、要するに何にお金を使うかがその人のキャラクターを形成していると言っても過言ではありません。
 自分に無理なく、本当の自分の好みで消費をし、しかもそれがアーティスティックである。これは相当難しいことですね。色々な情報を吸収して、そして自分を磨かなければなりません。うーむ、まだまだ道のりは長い。

 というわけで、今年の私は、常に行動力を伴い、自らを鍛えて磨き前進あるのみ。そして気がついたらそれなりの自信を身につけて、頑張っている同好の士に拍手を送れるゆとりを持つ。音楽でもゴルフでも勿論仕事でも。そんな風になれるよう頑張りたいと思います。こりゃ大変だ。忙しい。というわけで、今月は一押しとは何の関係もありませんでしたが、私の一年の計でした。どうか本年もよろしくお願い申し上げまする。


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