須田邦裕の「今月の一押し!!」
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2004.04.15 今回の一押しは「ジャコビニ彗星の日」だあ!
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私の事務所では、一日中有線放送の音楽が流れています。チャンネルの選択は従業員に任せていますので、朝からレッド・ツェッペリンやグランド・ファンクが流れている日もあれば、なんだかよく分からないけれど最近のJ-POPのヒットチャート漬けになる日もあったりと、まあそこそこ楽しんでおります。そんな中で最近、かつて何度も耳にした懐かしいメロディが時々かかるのが気になっておりました。 それはグスターヴ・ホルストのオーケストラ組曲「惑星」の中の、「木星」に現れる美しい旋律。記憶は定かではありませんが、昔、日曜洋画劇場か何かのエンディングテーマにも使われていたような気がします。ネットで調べたら、有線で流れているのは平原綾香さんという歌手がその名も「Jupiter」というタイトルで発表された作品だそうで、日本語の歌詞をつけてコード進行も一部リハーモナイズして、素敵な曲に生まれ変わっていました。さっきも聞いたばかりなので、今回はこの曲にちなんで星と音楽について少しお話ししてみたいと思います。 私、クラシック音楽は結構まじめに聞いておりました。ベートーベンやマーラー、ホルスト、チャイコフスキーなどのオーケストラ作品は、学生時代に銀座のヤマハに行ってスコアまで買い込んで、素人ながらに一生懸命分析しようと時間をかけました。レスピーギなんていう作曲家も好きでしたね。ローマシリーズの作品はものすごく重厚で、スコアを眺めていると音符の羅列が整列した軍隊のように見えてくる。楽譜を見ながら、何回も何回もレコードに針を落としました。 そんな彼がある日、私にこんなことを言いました。「須田、ホルストの惑星って知ってるだろ?あの曲の中にさ、他の楽器がどんどんデクレシェンドしていくのにホルンだけがクレシェンドしていくところがあるんだよ。かっこいいぜー。ほら、ここ。」といって見せてくれたのが交響曲のスコアという奴です。オーケストラ用の曲ですから、バイオリンからコントラバス、打楽器まで何十種類もの楽器のパート譜があります。それが全部整列して書かれている、強烈なボリュームのある楽譜です。楽譜というより本ですね。 でもその頃の思い出で最も印象深いのが、「天体望遠鏡買ったんだ。すごいぜ、土星の輪っかが見えるんだよ。見に来る?」という彼のせりふです。すげー。またまたびっくり。オーケストラと思ったら今度は天体観測かぁ。俺より10年くらい先を行ってるなあ。私は一も二もなく、彼のお宅にお邪魔する約束をさせてもらったのです。 うーん。なんか小さい丸。100メートルくらい向こうの懐中電灯の光みたいな。「輪っか見えるだろ?」という彼のうれしそうな声に「あ、うん」と答えましたが、想像していた土星のイメージとは全く別物でした。ちょっとがっかりしたけれど、でも寒々とした部屋でオーケストラ曲を聴きながら一生懸命何かを考えている彼のライフスタイルを垣間見て、なんだかとても熱いものを感じ、世の中にはこういうすごい奴がいるんだなあ、と強いインパクトを受けたことを覚えています。私はそのお陰でクラシック音楽の美しさに目覚め、よく分からないままにスコアもたくさん買い込み、音楽の世界へとのめり込んでいったのです。 そして大学に入り、ジャズが好きになってどうしても管楽器がやってみたかった私は応援団の吹奏楽部に入りました。私はトロンボーンを担当することになりましたが、そこでまたホルスト作曲の名曲に巡り会いました。それは「吹奏楽のための第一組曲」という作品です。吹奏楽をやられたことのある方なら恐らく皆さんご存じと思いますが、美しい旋律の詰まった名曲です。 ところで星と言えば、星をテーマにした曲で私の学生時代に流れていた素敵な作品があります。それは松任谷由実の「ジャコビニ彗星の日」。1979年に発表された「悲しいほどお天気」というアルバムに収録されています。 夜のFMからニュースを流しながら 部屋の灯り消して窓辺に椅子を運ぶ 美しいメロディ。そして何より美しい歌詞。やっぱりユーミンは天才ですね。うーん、クラシックもいいけどJ-POPもいいなあ。やばい、今月は一押ししたいものが山のようにある(汗)。どうしよう…。えーい勢いだ、はいこれ!あ、ユーミンになってしまいました。というわけで、今月の一押しは「ジャコビニ彗星の日」でした。私ってやっぱりジャズは無理なのかしら。ちょっとショック…
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