須田邦裕の「今月の一押し!!」
2001.09.15  今月の一押しは「Mama told me(by Three Dog Night)」だあ!
 最近、日産自動車のワンボックスカーのCMで「雨を見たかい」という曲が使われているのをご存じですか。正しくはHave you ever seen the rainという題名で、アメリカのロックバンドCreedence Clearwater Revival(略称CCR)の古いヒット曲です。1970年12月に発売された「Pendulum」というアルバムに収録されていた曲ですが、当時CCRに入れ込んでいた私は、このアルバムを輸入盤で手に入れた記憶があります。その後このアルバムの中から何曲かがヒットしたとき、邦題の「雨を見たかい」というのを聞いて、確かに現在完了形の経験の意味には違いないけれど、「見たかい」はないだろうと妙に白けた気分がしたものでした。

 それにしてもCCRの曲は、実にシンプルでわかりやすく、耳からストレートに入ってきて心を揺さぶるソウルがあります。ほんの2,3分の短いナンバーが多いけれど、忘れられない名曲が沢山ある。Green River、Proud Mary、Susie Qなど、また聴きたい曲が次々に頭に浮かびますが、そんな中で私がもっとも愛しているのはBorn on the bayouという曲です。これは今聞いても本当に凄い。ロックというかブルースというか、たった一つのコード上で延々と続くギターソロにはジャズの香りさえする。そしてボーカルの破壊的なパワー。しびれますぞ。ご存じでない方がいたら是非一度チャレンジしてください。

 そう言えば、Rolling Stones のJumping Jack Flash も最近なにかのCMで使われていました。ストーンズもいい。いずれもシンプルでストレート。それでいて何とも言えない色気と虚無感がある。Honky tonk women や Brown sugar などは、今でも繰り返し聞いている私にとって重要な曲です。思い出してみると、当時の私の音楽好きの仲間にはビートルズ派とストーンズ派があって、お互いをけなしあう熾烈な戦いを繰り広げておりました。かわいいもんですが。ストーンズ派だった私は、John Lennonはギターが下手だとか訳の分からないことを言っていました。子供だったなあ。とんでもないですね。

 学生時代には、よく日本武道館や後楽園球場(東京ドームではありません)で行われたロックコンサートに通いました。 Led Zeppelin 、Grand Funk Railroad 、Three Dog Night 、Chicago など、ものすごいバンドが次々にやってきては、想像を絶するステージを繰り広げていました。コンサートの翌日は耳鳴りで授業もよく聞こえず、肉体的にもやっつけられていましたが、それ以上にアメリカの音楽のレベルの高さに大きなショックを受けておりました。C,Am,F,Gといったコード進行しか知らない私には、なぜこんな曲を思いつけるんだろう、どうすればこんなイメージを形にできるのかと、もう神様を見ているような感じでしたね。

 そんな中から一曲を選ぶのは至難の業ですが、そのころ受けたショックの大きさという点で言うと、この曲の右に出るものがないという曲があります。それはThree Dog NightのMama told me というナンバー。Three Dog Nightは、男性3人のボーカルにバックバンドがついた確か7人前後の編成のバンドでしたが、このボーカル隊が凄い。そしてこの曲。思えば今流行のラップの走りですね。メロディラインに乗っているようなそうでないような、つぶやきのような出だし。そして突然やってくる完璧なハーモニー。その歌詞はMama told me not to come. That ain't the way to have fun, son. 隠微な雰囲気、短いけれど凄くかっこいいギターソロ、腹にこたえるベース。初めてラジオからこの曲が流れてきたとき、必死になって演奏者名をチェックし、すぐレコード屋に飛んでいきました。でも何回聞いても一体どういうコード進行になっているのか、さっぱりわかりませんでした。とにかく大ショック。というわけで、私の今月の一押しは「Mama told me」(by Three Dog Night)でした。

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