須田邦裕の「今月の一押し!!」
2002.02.10  今回の一押しは「Maui Daybreak(by C.R.Lassen)」だあ!
 2月。今年も確定申告の季節がやってきました。うー。うー。牛じゃありません。何というか、つらい毎日を送っています。

 「商売繁盛、儲かっていいでしょー」とおっしゃって下さる方もあります。確かに臨時の収入を頂けるのはうれしいことですが、恐らくこの業界の人はほとんどが、どうやって期限までに間違いなく仕事をこなすかということで頭が一杯ではないでしょうか。私もその一人ですが、それでも楽しみがないわけではありません。というのは年に一度、確定申告の時期に忘れずに事務所を尋ねて下さる方がいらっしゃるからです。
 「お元気でしたか?」「今年も申告頼むね」「一年経つのってほんとに早いですよねー」こんな会話を交わしながらお互いの無病息災を祝いつつ、久し振りに拝見する笑顔、笑顔。この仕事をやっていてよかったなあと感じることのできる一時です。そして今年も、ご紹介などを通じて初めての出会いがいくつか生まれました。そんな方と来年もまたお会いできるとしたら、それは自分の仕事を評価していただけたことの証であり、ビジネスマンとしてこれ以上の喜びはありません。

 ところで出会いといえば、それは人だけではありません。絵との出会い、音楽との出会い、本との出会いなど、どなたにも忘れられない経験がおありだと思います。私にも、まだ素人の域は出ませんが、忘れられない絵との出会いがいくつかあります。オークションなどに参加するようになって、あと少しのところで予算が足りず落札できなかった作品は、もう次回いつ出会えるか分からない。というより二度と出会えないと覚悟しなければなりません。「あー、あの時もう少し頑張っておけばよかったなあ」と後悔することもときどきありますが、これも言ってみれば「縁」でしょうか。ビュッフェのくわがた虫の版画など、5年くらい前にチャンスを逃したきり、その後どこにも出てきません。

 かつて、まだ絵のことなんて何も分からなかった頃、10年くらい前でしょうか。渋谷の東急ハンズに行ったら入り口の所に今までに見たこともない美しい絵が飾られていました。それはクリスチャン・ラッセンの「Home Port U」という作品で、月明かりの港を描いたブルーを基調とする物静かな風景画でした。50万円前後の値札がついていたように記憶しています。「うわー素敵だなあ、欲しいなあ」と思いましたが、手が出るわけもなく何度かその前を行ったり来たりして帰ってきました。そのときに初めてラッセンという作家を知り、その後間もなくハワイ在住のプロのサーファーで絵も描く人だというプロフィールを友人に教えてもらいました。

 ラッセンはかつて一世を風靡しましたが、その後商業ベースに乗ってしまい、イルカが空を飛んだり熱帯魚がジャカジャカ泳いだりと、今や見る影もないほど俗っぽい作家になってしまいました。値段もガタガタと音を立てて崩れています(因みに最近のオークションでは、先ほどの50万円の作品は10万円前後で手に入りますね。買いませんけど)。それでも初期の作品には、やはり美しいものがあります。私にとって何となく気になる作家ではあるのです。

 そしてその後、渋谷のイメージが忘れられずにいたある日、関与先の経営者の方の家にお邪魔したら、何と応接間の壁にそれ以上に素晴らしい作品が飾られているではありませんか。お伺いするとそれは「Maui Daybreak」というラッセンの代表作であるとのこと。これは凄い(と、そのときは思いました)!そしてどうしてもその絵が欲しくなり、何度かお願いしてお願いして、拝みまくって拝み倒して、そんなに言うのならとついに譲ってもらえることになりました。いくらであったかは武士の情け?申し上げることはしませんが、もう嬉しくて嬉しくて、毎日その絵を眺めるために急いで帰ってくるという日々が続きました。

 今でもこの絵は私の大切なコレクションです。多分オークションに出すこともないでしょう。疲れたとき、確定申告の書類の山に埋もれているときなど、ときどきボーっと眺めています。くだらない絵だと言えばそうかもしれないのですが、いわゆる「癒し系」の作品としてはなかなかよく出来ています。遙か遠くの水平線、日の出直後の太陽の光、日の光を受けてブルーに輝く波など、どこを見ても美しい。何というか心が和むんですねえ。そんなわけで今月の一押しは「Maui Daybreak (by Christian Riese Lassen )」でした。今回は何とデジカメで撮った写真付きだぁぁぁぁ!
    

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