須田邦裕の「今月の一押し!!」
2003.09.16  今回の一押しは「教えを請う−その2」だあ!

 しばらく前に、教えを請うことの喜びについてお話申し上げました。そのときのテーマはゴルフ。千葉先生というゴルフインストラクターに自分をさらけ出した経緯について、恥を忍んでおしゃべりさせていただきました。今回は、これに懲りずにその続編をやりましょう。テーマも「教えを請う−その2」です。なんか最近恥をさらすことが快感になってきちゃったなぁ。別に露出狂ではないんだけど。

 さて今回は何の教えを請うのかというと、それはギターです。
 私のギターとの出会いは、今を去ることウン十年前に遡ります。その当時確か中学生だった私は、フォーク・クルセーダーズというバンドに憧れておりました。「悲しくてやりきれない」「帰ってきたヨッパライ」など、当時としてはものすごく斬新なヒット曲を連発したバンドで、加藤和彦がフォークギターを抱えて歌う姿に「自分もあんな風になれないかなぁ」と漠然と思っていました。加山雄三のエレキギターもかっこよかったし、インストゥルメンタルだけどベンチャーズも相当聞きました。でもギターなんてどうやって弾くのか全然分からないし、その頃の世間の親たちは「ギターを弾くヤツは不良だ」なんて、今では考えられない感覚を持っていましたから、真面目な?私は自分とは縁のないものだと思っていたのです。

 ところがある日、加藤君という友人の家に行ったら、なんと加藤君がベッドの上に座ってジャラジャラとギターを弾いているではありませんか。彼はとても上手で、今思い出しても「ジャラジャラ」としか形容のしようがないような、本当に豪華な乾いたいい音を響かせていたのです。当時としては、自分の部屋があって、しかもそこにベッドがあるなんて、もうそれだけですっごい金持ち。それに加えて加藤くんは確か12弦ギターも持っていたような気がします。布団を上げ下げして生活していた私には、完全に別世界でした。とにかく画期的な人だったんですよ。
 それからというもの、親に向かって「ギター買ってくれ」を連発しました。そしてついに根負けした父に、緑屋というデパートの地下でやっていた「ボロ市」という質流れ品処分市みたいなところで中古のクラシックギターを買ってもらいました。三千円だったような気がします。加藤君のギターとはだいぶ違うけど、でもうれしかった。
 すっかり暗くなった道を二人で自転車で帰りましたが、前を行く父が右手でギターを持ち、片手運転でペダルをこぐ姿が今でも忘れられません。後ろをついていく私は、うれしいような、でもなんか凄く悪いことをして親に迷惑をかけてしまったような複雑な気持ちでした。本当に優しい父でした。まだ生きてますけど。

 さて、ギターを買ってもらったはいいけど、問題はそれからです。楽器屋とかレコード屋に行くと、確かに教則本などは売っているのですが、ニューミュージックの楽譜なんてしゃれたものはありません。当時は、ギターといえば古賀政男先生。売ってる教則本は、クラシックか、それでなければ「悲しい酒」です。仕方がないので、友達に教わりながら、少しずつ練習しておりました。したがって上手くなるはずもありません。
 ところがFのコードを押さえてやっと音が出るようになったちょうどその頃、サイモン&ガーファンクルというギターデュオが登場したのです。洋楽のギター楽譜もぼちぼち登場し始めました。これならできるかもしれないと思い、夢中になって友人とS&Gのコピーをやって遊びました。そしてビートルズ、CSN&Y、赤い鳥、ハイファイセット、ユーミンなど、色々なことをやりましたねえ。残念ながら、全部独学のいんちきギターで。もしもその頃にギター教室にでも通ってちゃんと習っていたら、もしかして今の人生は多少変わっていたかもしれません。まったく「後悔先に立たず」とはこのことです。

 さて、Time goes by。時は過ぎ去りました。最近ポール・サイモンのコンサートDVDというのを懐かしさのあまり衝動買いしてしまいましたが、画面に映ったのは八百屋のおっさんみたいな野球帽をかぶったずんぐりむっくりのおじいさん。人間って年を取るとどうして顔が大きくなるんだろ。昔は知的な小顔だったのになあ。衝撃的にがっかりしました。確かに声はポール・サイモンだけど、見なけりゃよかった。そのくらい時間は経ってしまったのです。しかし長い年月が経ったにもかかわらず、私のギターの腕は一向に上達しません。
 ところが有り難いことに、今年はその状況を一変させるかもしれない出来事が起きてくれたのです。それはジャズギタリストのジョン・ピザレリ様との出会いです。このコーナーの本年4月のページにもご紹介しましたが、7弦ギターを自在に操り歌も上手なピザレリさん。ジャズ・スタンダードをかっこよく演奏するその姿に私は完全に参ってしまいました。ブルーノート東京のステージの後、横浜のモーションブルーのステージまでチケットを入手し、「追っかけ」と化して一緒に記念撮影までさせてもらいました。"Very very wonderful stage! I was so much excited!"と申し上げたら、笑顔で"Thank you"と答え握手してくれました。たまりません。ほんとにたまりません。

 これを境に、ギターに対する私の情熱が一気に燃えさかり始めました。つまらないプライドを捨てなきゃならないのはゴルフで経験したばかりじゃないか。そうだ、ちゃんとしたところに習いに行ってみよう。「実行あるのみ」を今年の一年の計とした私は、それから間もなくインターネットなどを利用していくつかのギター教室の門を叩くことになったのであります。
 そしてついに。西荻窪にある新堀ギター学院という教室で、竹内先生という素晴らしい先生に出会ってしまいました。音楽家というよりは銀行員みたいな風貌の方で、いつも笑顔で「須田さん、その後練習してますか?」と話しかけてくれるナイスガイです。音楽家にありがちなヒステリックな感じはまったくありません。それでいてジャズのコード理論などはかなり勉強されている様子。毎回の授業がとても楽しみです。
 現在はボサノバを中心に週1回のペースでレッスンを受けていますが、わずか数ヶ月でかなりのことを教わりました。それについてお話ししようと思ったら、あーら残念。今回は予定の字数になってしまいました。そんなわけで今月の一押しは「教えを請う−その2」でした。その3はまた来月ねー。

 
 ↑あこがれのピザレリ様です。


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