ページの先頭です

財務Q&A

税務Q&A

ホーム > 税務Q&A一覧 > 資産税のQ&A一覧 > 名義の問題

名義の問題

専業主婦ですが、夫が亡くなった場合には私の預金にも相続税がかかると聞きました。そんな馬鹿な話はないと思うのですが、本当ですか。

専業主婦のように外からの収入がない人の名義の預貯金等は、相続財産と認定される可能性が非常に高くなります。

解説

1.財産の名義とは
(1)名義とは
財産の名義とは、本来は所有権を表すものです。不動産を買って登記をするのは、これは私のものだと主張することにより悪意の第三者から自分の権利を守るためです。しかし税法の世界には、名義に拘わらずその課税対象の真実の帰属者に課税しようとする「実質課税の原則」という考え方があり、このためにときとして名義という観念があやふやなものになることがあります。
(2)不動産の場合
土地や建物を取得するという行為は、人の一生にそう何度もあることではありません。このため多くの人は意思決定に慎重になりますし、また取得後には殆どの場合において税務署から「購入資金のお尋ね」というような文書が来て、その資金出所について詮索されます。つまり一般市民が購入する不動産の場合には、その名義者と真実の所有者の関係について、かなりの確率でチェックが済んでいることが想定されます。
このため相続財産に土地や建物がある場合、その名義人が真実の所有者であるかどうかについて、税務署からとやかく言われることはあまりありません。たとえば夫が亡くなった場合に、妻が自己名義のマンションを所有していても、それを相続財産に加算する必要は殆どの場合においてないのです。
(3)預貯金の場合
これに対して預貯金や株式などの金融資産の場合には、名義と所有の一致という意識が希薄なケースが数多く見受けられます。たとえば「専業主婦が夫に内緒で貯金する」、「子供には内緒だが相続対策として子供名義で貯金しておいてあげる」などは、多くの家庭で見られる事例ではないでしょうか。
このような場合、その預金の名義人となっている人は本当にその預金の所有者なのでしょうか。答えは明らかにノーです。金融機関の窓口では本人確認が求められますが、それはその人が実在するかどうかのチェックだけで、当然のことながらその預金の真実の所有者であるかどうかまでは詮索しないのです。

2.家族名義の預金等の取り扱い
このような事情から、一家の主に相続が起きた場合には家族名義の財産が本当は誰のものであるか、ということが必ず問題となります。我々専門家から見れば、専業主婦の妻がいてその妻名義の預金を一切申告しないのは、税務署に調査に来てくださいと言っているようなものです。
(1)親族所有の財産の場合
しかし共稼ぎの夫婦では当然に妻固有の財産がありますし、また専業主婦でも実家が資産家であるようなケースでは親から遺産相続したり贈与を受けているケースもあります。したがってそのような場合には、夫婦の間でも丼勘定とせずに、それぞれの財産を日頃から明確に区分しておく習慣を付けることが必要です。家族名義の財産が無差別に遺産に取り込まれるわけではないからです。
(2)計画的に贈与していく場合
専業主婦がへそくりを持つことは悪いことではありません。ただしそれを自分のものだと主張したくても、「長い年月の間に何となくたまってきた」というだけでは納得してもらえません。夫婦や親子の間でも、ただで財産が移転すれば贈与ですし、贈与は契約ですからそれぞれを特定できる必要があるからです。たとえば毎年結婚記念日に110万円(贈与税の基礎控除枠)を妻名義に変えるなど、後からそのことが確認できるようにしておくことが必要です。
(3)それ以外の場合
上記以外の場合には、家族名義の財産は正直に遺産に加算して申告することです。それでは妻の功績が認められないと怒る人がいますが、そんなことはありません。夫婦で作った財産の半分までを妻が相続する場合には、相続税は一切課税されないからです。税法は妻の権利をちゃんと認めているということですね。
(本文は平成22年4月1日現在の法令による)

ページの先頭へ